山下達郎 : コージー
ARTIST / 山下達郎
TITLE / コージー
LABEL / warner
DATE / 1998
TITLE / コージー
LABEL / warner
DATE / 1998
2190。もう思い出もかすみ、記憶は本棚の片隅へ。リアルタイムで本作を楽しんだ僕は、当時幸福だった。予感のあるイントロで始まる本作が、山下達郎の諸作において、どのような位置づけを与えられるのか分からないけれども、日本で数少ない本当の天才ミュージシャンの1人である彼が作った盤に手抜かりなどは一切ないのであった。「クリスマス・イブ」が収録されているわけではないけれども、この時期にこすられ続ける曲の雰囲気があらゆるミックスへと妥当された曲たちは、夏を歌っているような場合であっても、太陽を賞賛していたとしても、あまりにもろうそくのアンバーを喚起する暖色で経験的に彩られているのであった。暖かい冬である。全ての孤独な人よ。涙は言霊になるのである。ビジュアル的にはヒモテ代表のような男であっても、唯一かつ最高峰の才能によって山下達郎はレーゾンデートルを強烈なまでに主張する山下達郎の音楽には夢と夢と夢があるのであった。本作に収録されている「Dreaming Girl」から呼び出された松本隆とは、70年代なんてものは存在しなかったように、それを時代遅れにしないように、仕事が行われている。粛々と良い曲を作るために。贅沢に響く音の波は、彼自信が途方もないほどの音響へのこだわりを持っていることをなんら困難なくあかしている。前作から7年という沈黙を破りながら、しかし実際のところは、商業的な刷り込みという手段によって、CM曲を大量に提供し続けることで、こっそりとしかし脳みそへは強烈に存在を刻んでいた。ここにもなんら手抜かりがない。どこかで聴いたことある曲たち。そりゃそうだ。ドーナツから車からビールから朝ドラまで、山下達郎が刻み続けた記憶の深層は、その頃を漫然とでも生きていさえすれば、本作を特別な1枚として確立させてしまうのであった。そんなこんなでメリークリスマス。