小谷美紗子 : Profile - too early to tell -
ARTIST / 小谷美紗子
TITLE / Profile - too early to tell -
LABEL / mca
DATE / 1997
TITLE / Profile - too early to tell -
LABEL / mca
DATE / 1997
2178。以前紹介した盤『i』。突如日本に現れた完成されきった女性SSW小谷美紗子による1st。イルカでも中島みゆきでも荒井由美でもない。われわれの90年代に与えられたほぼ唯一無二の70年代的な存在である。ボニーピンクはあくまでも90年代的な存在だから、また違うしな。何言ってるかわからんだろうけど。Carole Kingのような強さのあるボーカルは、当時、結構なおばちゃんなんだろうなと思わせた。それでも本作をリリースしたときは21歳前後。すごい才能なのであった。中村一義のように。その後100Sのメンバーたちの交流など、ジャパンオルタナ勢との接触が取り上げられるにつれ、若いあなぁと実感したってぐらいである。とにかく、神妙で、暗闇で、透明感のある、しかしにごりきったメッセージソングを並べ立てる。「正直になれ政治屋さん」という2013参院選が終わった直後に聞くと、なんともしみじみと、実感とはまた違う共感を引き寄せる。「何ができますか、偽善者かもしれないのに」という「見せ掛け社会にフィットした私は日本人です」。そんな小谷美紗子は「正直になろう。胸を張って歩けるように」と照れもなく中学生の僕たちへと言葉をくれた。「まだ間に合う。同じ時代に一緒にいるのだから」。僕もそうお思う。そんな新たな共犯幻想を僕たちに与えてくれたのだから、僕にとっては特別なSSWなのであった。ラジオで、当該の「見せかけ社会」や「嘆きの雪」、そしてなんといっても陰鬱すぎる「自分」を聞いたときの心持ったらない。そんな暗い時代を生きてるの。僕たちは。享楽は終わったのかもしれないけど。でも、結構楽しくやってるはずなんだけどな。見せかけってそういうことなのかな。ディック的な世界観への共感、というか、表面からの離脱というか、URへの欲望というか。プラトン的なイデアへの憧れというか。顔より中身でしょっっていうか。そんな精神性を強く、硬くした。音自体は、結構ハイテク仕様で、ロウギアではないから、ちょっと時代を帯びているかもしれないが、消え去らない歌心と、曲作りのよさによって、僕たちの状況に取り込まれた価値を獲得してる。とにかく自己批判に似せた、偽善者たちへの強烈な攻撃に満ちていたけれど、この時代にそのような精神性を回復させることの意味は問われることなく、その隔世遺伝は、木漏れ日を頼りにささやかに生きるはずだった僕たちを多少なりともまだらにし、そして最終的には何もできない斜に構えた大人を幾人か生産し、世界はそのまま、変わることなく、10年代を軽やかに進んでいる。軽やかに。