Captain Beefheart & His Magic Band : Trout Mask Replica
ARTIST /Captain Beefheart & His Magic Band
TITLE / Trout Mask Replica
LABEL / straight
DATE / 1969
TITLE / Trout Mask Replica
LABEL / straight
DATE / 1969
1783。以前紹介した盤"Safe As Milk"。M1から異様な塊で攻めてくる。そのテンション。その怪奇さ。僕たちが直面する音楽の問い直し。そしてそれをすべてひっくり返して、挨拶をする鱒顔。何を信じればよいのか分からなくなる。しかし、本作の教科書性、経典性の高さによって、強固に存在する奇跡、一個の愛に満ちた魂として僕たちの精神を矯正するわけだ。そんな3rdである。それまでのバンドがいったん再編成され、地獄の合宿が行われて生み出された本作は、まるででたらめじゃないか、と叫びたくなる全体をもちながらも、すべてが計算という裏切りを秘めている。その秘密は、即興演奏を譜面に起こすという苦行によって獲得された手法だった。そしてその再演は、天才のみが即興を許される1発録音だったというから、強烈なカーストである。再編されたメンバは、楽器の経験がなかったものがほとんどで、彼らは自らが即興で生み出しながらも、それから取捨選択されたフレーズに金縛りされ、古典的ロボットのように動いていたわけである。いや、宗教的人間と言い換えてもよい。天才の後ろには、彼を操るもう一人の天才Frank Zappaがおんましますわけだから、本作はさらにねじれた環境を持っている。それにしてもM5などが持つ緊張感はなんだ。本作が持つ強烈な閃光は、多くの若者をだめにした。僕が本作に初めて触れたのは大学生の頃。ミュージシャンになりたい友人が人生の1枚として本作を示した。彼もまた、この真っ赤な閃光にとらわれた1人だった。David Lynchがやられてあんな映画を作り続けているのもうなずけるだろう。世界中の主要なランカー雑誌が本作をランキングの上位に置くのは、彼らもやっぱり脳が少々やられているからだと思う。素晴らしくキャッチーに抜ける瞬間、僕たちの信仰心は許された気がしてしまう。われわれは、試されるどころか、優しく介護されるかのような気持ちになる。その麻薬性。とてもとても、危険だと思う。