Oval : Systemisch
ARTIST / Oval
TITLE / Systemisch
LABEL / mille plateaux / thrill jockey
DATE / 1994 / 1996
TITLE / Systemisch
LABEL / mille plateaux / thrill jockey
DATE / 1994 / 1996
2255。2nd。オリジナルのミルプラではなくthrill jocky盤を買ってしまった。失敗。このブログを始める前にOvalの諸作を買ってるはずだけど、どれを持っててどれを持ってないか全然把握できなくて、困っている。ドイツで1991年にMarkus PoppがスタートしたOvalは程なくして日本にも紹介され、90年代のナードもギークもまだまだ未分化な音楽シーンでどの羨望を一身に集めていたのはご存知のとおり。当時はMarkus Poppのほかにも、Sebastian OschatzとFrank metzgerという2人のメンバーがいたが、その後数枚のリリースのちに脱退したようだ。無機質なデザインは音楽との連想を作り出し、歌詞への自己投影などに一切うんざりした人々の耳はこのような電子音楽を捜し求めた(というまではいかない)。ビートが強いわけでもない。微細なグリッチ音を丁寧に織り込んでいく。チルアウトするというには、叙情性があり、聴くことへの集中を促すスタイルだった。この粒だった音の構成には快楽があったわけだ。本作を現在聞いても、一切の古さを感じさせないデジタル時代の音楽。これが1994年にリリースされているわけだ。同じような音楽は00年代~現在にいたるまで大量に生産され、現在はwebによって大々的に拡散している。mille plateauxがやったのは、エクスペリメントな音楽であるにも関わらず、比較的ポップスよりの市場にその塗り絵のニッチな隙間を見出すことだった。その代表がOvalであることは言うまでもない。その流れの中、ラップトップ・ミュージックの手法を大々的に取り上げたシカゴのシーンにおいて、その中心的なバンドTortoiseが所属していたレーベルthrill jockeyが本作のライセンスを取ったことになんら不思議はない。ata takの1stに続いてリリースされた本作が90年代らしい特徴を帯びるのは、その制作手法にある。故意にCDに傷を付け、細やかなノイズを生成するというやり方で、終わることないとおもわれていたCDという物理メディアに依拠しながら(奇しくもその絶頂が90年代だった)、この美しい音楽は創られたという。決してリリースの間が空いたわけではないし、リリースがあれば多少なりともその動向が紹介されるレベルでOvalの息遣いはまた耐えていない。ただ、その栄華を誇った時代と比すれば、影響力の低下は明らかだとおもう。現在でも甘くささやくように音楽が聞こえてくる。名盤だと思う。