Theo Parrish : Sound Sculptures Vol.1
ARTIST / Theo Parrish
TITLE / Sound Sculptures Vol.1
LABEL / sound signature
DATE / 2008
TITLE / Sound Sculptures Vol.1
LABEL / sound signature
DATE / 2008
2308。以前紹介した盤"American Intelligence"。2ndから7,8年のブランクを経て、本名義でリリースされた2枚組みの大作。前年には、3枚組みでよりフロア志向な曲を集めたヴァイナルverがリリースされ、速攻で完売したといいます。CD版はそんなヴァイナルから零れ落ちた、あるいは納め切れなかった渋いトラックを年月分ぶち込んだんでしょう。。独特のたゆたうような空気感。しっかりとフロア志向なビートは刻んでいるのだが、余裕感があふれている。ブラックミュージックとは何かを、言葉として文字通りに刻みながら(M3)、その精神性のもとに(どの精神性かは知らないが)、ジャズ・フィーリングもソウルもファンクもヒップホップもまるまる全部同じ俎上に並べて、それらを渾然一体の音楽へと消化している。そのダイナミクスは、フロアを横ノリで演習するビートたちである。指先まで震える、そんなビート。キッズやヤング・アダルトたちが手を出すような部類ではない、本当にエロクておしゃれで優雅な大人たちが身を預ける音楽。明示的なクライマックスや、印象重視の緩慢な繰り返しなどは存在しない。これをデトロイトテクノの至宝だなどと叫び、名盤だ名盤だと誤解を与えるように風潮して、なけなしのお金を払って(いつだってTheo Parrishの盤は価格設定が高めである)、本作を購入した子どもたちががっかりする顔を見たいとは思わない。ともすれば明示的な刺激の欠如からくる<退屈な音楽>へと本作は変貌してしまうかもしれない。そんな不幸な出会いは、あまり望まないのがアルコールを飲めるようになった紳士淑女の務めではないだろうか。Vol.1と冠されているが、おそらく2015年現在でこのシリーズが続けられているという話はきかない。本名義でのリリース頻度は極めて待ったりしているし、まさに本年はリリースがあったわけであるから、しばらくまた彼はフロアに身をゆだねながら、フロアを見極め、フロアにふさわしい、フロア音楽をフロアしていくに違いない。そして、僕は、フロアから遠く離れた部屋で、ラムネ菓子を消化しながら、またあいましょう。