大森靖子 : きゅるきゅる
ARTIST / 大森靖子
TITLE / きゅるきゅる
LABEL / エイベックス
DATE / 2014
TITLE / きゅるきゅる
LABEL / エイベックス
DATE / 2014
2251。以前紹介した盤『黒歴史再録』。帯び曰く「メジャー進出で超楽しい地獄をつくろう☆」。9月18日の誕生日にエイベックスからメジャーデビューした大森靖子。ほぼ全てを音楽に(そしてそのほぼから零れ落ちた残滓を彼女が面白いというものへと)注ぎ込んで、2年間の契約のもと(やや落ち目とはいえ誰もが知ってるであろう)ジェイポップの資本中の資本エイベックスから1番をとるために。みんな誰かを好きになりたいんでしょ、それなら私でいいじゃん。という反転した超絶夢想モードに突入した大森さんが果して本当に売れるのかどうかは知らない。売れたらいいなぁ売れて欲しいなぁ、それは面白いなと思う。エイベックスが本気だしたら、愛とか平和とかうたいだす前にきちんとMステまでの道筋たてて、何かしらの傷跡なのか、出産なのかしらないけど、きっと残してくれるさ。恐怖すら覚えるキャピタリズムをもってして、青いワンピを着て精液まみれになった大森さんは、ギターを抱えながら、弾くことわすれてんじゃねーかと思わせない程度に「裏」というカップリングを備えている。ライブやらでは披露している「ノスタルジックJPOP」や「ワンダフルワールドエンド」や「デートはやめよう」は一切収録していない。勝負のしどころが読めない、というかそれが売れることの正解なのかもしれない。適度にあけっぴろげな歌詞を貼り付けて、どっから引っ張ってきたんだというブラックホールのようなN次元の引き出しから取り出された残滓としての旋律が流れていく。メジャーの一歩は、「私は面白い絶対面白いたぶん」という無双モードを宙吊りするかのような曲を引き連れている。金魚の糞なのか糞の金魚なのかしらないけど、彼女が自分に許した<音楽以外の3分>が、彼女の音楽の装飾ではなく核心ではないどころか、そんなもんあやふやで全てが一緒くたなんだよバーカ、わかんないなら死ね、とかいうような激情的感性派ぶるやり口が出てきたとき、僕はどうするかは目に見えているけど、画家は(それが過去形であれ)いつだって敬愛すべき存在だし、音楽家はいつだって愚鈍な大衆を躍らせる使命をカロリーとして自尊心を維持しているはずだから、僕は彼女が面白いという3分をスルーして、残りのありったけの音楽にレディース&ジェントルメンを続けるんだ。大森靖子のいう「音楽は魔法ではない でも音楽は」というその余韻を自分勝手な解釈で信じている。ファンなんてそんな所有欲にまみれたゴキ精神性ブリに支配された残滓以下の一部でしかない。なんにせよ、おめでとうございます。売れますように。初回限定盤は、恵比寿リキッドルームでの「絶対少女ツアーファイナル」を100分超で収録したDVDとセット販売なので買わざるを得ないという。