大森靖子 : PINK
ARTIST / 大森靖子
TITLE / PINK
LABEL / pink
DATE / 2012
TITLE / PINK
LABEL / pink
DATE / 2012
2214。以前紹介した盤"魔法が使えないなら死にたい"。帯の曰く「ポップ、パンク、ロックンロール。さまざまな妖怪が放り込まれた壷の中で、最後まで生き残ったピンク色の少女は、誰よりも強く、正確な言葉で、誰よりもやさしく歌うことができるのだ。」。なるほど。自己プロデュースに定評のある大森靖子を先日8チャンネルで見たけれど、そのあまりにも、どうしようもない音楽を引いた彼女にわりとぞっとする。アウトとかそんなことはどうでも良いんだよ。音楽をやれを。音楽、音楽、ミュージック!だと。その価値を圧倒的に持つ人間は、音楽をやれよ。音楽を。エイベックスさん頼むぜ。そこんとこ。本作は大森主催のpinkレーベルより出た1作目。全6曲のEP。すでに大森靖子のブシを聞くことができる。女の子を象徴するのであろうピンク色のなかで、精一杯メンヘラを演出しようとする彼女の生きる道は、そんなピンクを浴室にあふれる体液に見立てたキービジュアルによって表面的に仮構させる。音楽とビジュアルの整合は、それこそ近年では椎名林檎が成功させ、売れた。でも、大森さん、あんたは違う。あんたは音楽をやってください。どこまでも計算高く。良い歌詞はくだらない言葉たちの中で最高に立ち上がる。この小品のなかでもその瞬間がある。くだらない演出された現実の言葉たち、ラブホテル、歌舞伎町、オヤジ、野球中継、ダンボールのテーブル、あたらしい総理大臣、原発、病院。その他大勢がさしはさまれる彼女の現実。中途半端なビジュアルを自己プロデュースで塗り固めながら、自分のなかの汚らしいオヤジの部分をぶちまける。しかしそのどうしようもない言葉を下支えにして、失敗して、その契機のなかから、透明な本当が垣間見える。そうやって、誰にとっても「俺にしかわからない」彼女が出来上がる。この部屋にて泣きのあと一曲。本作の白眉は、最高に痛々しい、完全にアウトであるタイトル曲「Pink」である。何も分かっていないのに歌っていることが馬鹿だとといわれて、それでも歌いたかったという大森さん。最後に、全ての音楽に、全ての現実にありがとうという大森さんの最高に痛い瞬間は、歌詞カードにものせられない。自己演出が透明な本当を完全に覆いつくし、まじ勘弁だが、そこから何とか掬い上げられる圧倒的な透明な歌は、1stに大部分が結実するのであった。