キリンジ : 2 in 1
ARTIST / キリンジ
TITLE / 2 in 1
LABEL / natural foundation
DATE / 1999
TITLE / 2 in 1
LABEL / natural foundation
DATE / 1999
2182。90年代に生まれた楽曲のなかでも、その時代性を背負いつつ、複雑でいてポップネスをたたえる数少ない名曲としてある「風を撃て」を収録している。4分に満たないサイズ感でありながら、それが持つ永遠にもにた凝縮の密度たるや素晴らしい。この曲を書き上げたとき、今は離れ離れとなった堀込兄弟は目的語のない何かを証明した。当時はまだインディーズなる分野にも多少めくばせ出来ていた僕たちはキリンジの「冬のオルカ」の騒がれる有様に、さすがにほうっておくことはできない程度に心を躍らさずにいられなかったわけである。当時のインディー時代の音源を集めたミニアルバムである本作は1997年に発表されたS/Tである「キリンジ」、そして「冬のオルカ」という2枚の騒がれが1枚に突っ込まれている。それぞれの曲は、日本におけるインディーズという言葉が当時も今も抱えていた荒くれぶりを最先端のできばえによって鮮やかに裏切り、音楽とそれを実現する機材とが十二分に普及した90年代という世界での理想的なあらわれを見せているといえる。才能がそうさせているし、時代がそうさせている。すでに1998年にメジャー1stである『ペイパードライヴァーズミュージック』はリリースされており、Lサイドはそれを所持していたと思うが、俺はそこにも収録されている「風を撃て」に触れて痛かったわけである。正直、「冬のオルカ」はそれはそれで素晴らしいのであるが、当時のひねくれとあらくれとあらゆるくれなずむクレリズムによって、食傷の症状を額縁に飾ってしまっていたから、もうそれは脇においておいた。もちろん今聴けば、このインディー時代の贅沢な7曲のどれをとっても、勘弁してくれという凝縮によって、確信を与えてくれる。キリンジってのは最初から素晴らしく感性されたユニットであったのだと。これが俺たちのリアルタイムなシティ・ミュージックである。いやあ今聴くと「冬のオルカ」、えげつないぜ。すげえ曲だ。2人とも、これらの曲を書いたときはまだ20代後半、遅咲きというべきなのかどうかは知らない。しかし、すげえ兄弟だったことは間違いない。