Mrs Jynx : The Standoffish Cat
ARTIST / Mrs Jynx
TITLE / The Standoffish Cat
LABEL / planet-mu
DATE / 2008
TITLE / The Standoffish Cat
LABEL / planet-mu
DATE / 2008
2017。多分かなりの猫好きであるMrs JynxことHannah Davidsonによる1st。一聴して、熱烈なMu-Ziq信者であることが分かる。音の質がそう。浮遊感する旋律の使い方。しかし、暴力的なドリルンを導入できないというのは、趣向の違いなのか、能力の問題なのか。テクノ、IDM、その他もろもろ、何でも良いけど、この手の音楽は、多分、とうの昔に死んだ。そういわれてもおかしくないぐらい時間がたった。進化することもなく、だらだらとぎりぎりの延命を続けている。少数の郷愁を輸血しながら(そりゃもちろん、ローカルシーンにおける流行廃りで、なんとなく生命維持することぐらいできる)。俺の血も、できるだけたっぷりと、シーンに注ぎ込もうと思っている。ありがとうの意味もこめて。本作を聴いて、その響きに心温まる人もいるだろう。電子というのは不思議なもので、冷たい音楽のはずであるのに、もっとも感情的なものをプレゼントすることが可能である。小説に出てくる感情を持ったロボットが、人間以上に人間的であるそれに似ている。その意味で、本作はとてもセンチメンタルなわけだ。一方で、陳腐といえないわけでもない。もう、あなたがこの音を鳴らさなくても良いんじゃないの、とそう突き詰めたくなる気持ちも分かる。革新をその魂とする分野であるはずだ。なぜならばエレクトロニックとは、科学であり、未来であり、進歩だから。それでも、過去を感情的に抱えている。猫を抱えるように。そんな。もう時代は90年代ではない。00年代ですらない。僕たちは時代ばかり口にする。そりゃそうだ。そりゃそうだろう。なぜなんだろう。前を向こう。良盤。