七尾旅人 : 雨に撃たえば...!disc 2
ARTIST / 七尾旅人
TITLE / 雨に撃たえば...!disc 2
LABEL / ソニー
DATE / 1999
TITLE / 雨に撃たえば...!disc 2
LABEL / ソニー
DATE / 1999
1880。過去盤レビュー。この1枚が、これまで膨大な数がリリースされている盤たちのなかで占める位置はとても曖昧かもしれない。稀代の名盤と自信に満ちていえるだろうか。無人島で本作を抱いて死ねるだろうか。AKBグループがリリースする幾多の歌謡曲よりも、本作のほうが価値として優れているといえるだろうか。疑問ばかりが湧き出てくる。何度も何度も。しかし本作の振動を、腐った耳に、それこそ何度も垂らしこんだとき、その幾度目かの瞬間に、音楽が無駄な疑問をはさむ余地がないことを示してくれる。そのときの価値を抱えなければならない。
七尾旅人の現在形は、社会問題にセンシティブな態度をとるひげを生やしたいい感じの兄ちゃんである。ギターを抱えてヒップないい曲を書く。しかし、この頃の七尾旅人は、下駄をはいて、インタビュー中も足をばたばたさせる多動気味な若者だった。ソファで体育座りするような。ちょっとした痛さがあった。そのキャラクターと本作をセットとしてあわせると、ああなるほどね、不思議なことがしたいのね、歌詞もなんかよくわからないし。というか、disk1はどこにあるの、とか。声が聞き取りにくい、とか。終わりなきとかが続いていく。
それでも、この若者がやろうとした坩堝は、前代未聞の1stとして誉れ高くあってしかるべきだと思う。雑多な音楽をぐちゃぐちゃにして、ポップネスと破綻を共存させ、めんどくさいことに、名曲を書いてしまうという才能。個人的にいまいちなのはM6のみ。真の名盤というのは、常に完成を拒むために、1曲箸休めを配置するという持論が当てはまる。というかその持論が適用されるほかの盤は、日本が誇る盤、第一位の中村一義の『金字塔』しかないけど。
本作の白眉はもちろん、M7'ガリバー2'。イントロから高まる期待感。Aメロの納得感。サビの引き。10分を超える大曲なのに、飽きさせない。「僕はなんにも わかってない。自分のファンタスティックなからだのみを信じる。歌を。詞を。・・・・・・(書くとき発汗するんだ)」。90年代後半に中村一義が携えた日本語詞のある境地は、新感覚派として、いたいけな中学生から文学を奪い去った。七尾旅人は、それをもう少しナイーブに、もう少し痛く、どうしようもない鋭利さで提示している。同じ系譜とは言わない。新感覚という便利な言葉によって立たせてもらう。何か、新しいこと、期待、それらがこめられている。サビは愚直な反復ではなくCメロ、Dメロと展開していく。物語は平板に、「君」あるいは「お前」に「泣かないで」と願う。願うことは指示ではない。そこには、愛がある。この曲は全体として圧倒がある。
さて、M9'「思いつき!思いつき!!」なに?「キャトル・ミューティれるの。」'のような曲を作れる天才青年、七尾旅人。'コーナー'で、衝動を抱えながらまるで何でも知ってるかのように、ラストの'左腕◇ポエジー'で、そのごちゃごちゃの才能をまくし立てて終わるように、本作は圧倒を鳴らしていた。本作よりも刺激に満ちた盤があるとすれば、どうか聴かせて欲しい。
黒歴史として封印できないカロリーを与えられてしまった本作は、どうしようもなく音楽史に刻まれてしまっている。かわいそうな七尾旅人。
七尾旅人の現在形は、社会問題にセンシティブな態度をとるひげを生やしたいい感じの兄ちゃんである。ギターを抱えてヒップないい曲を書く。しかし、この頃の七尾旅人は、下駄をはいて、インタビュー中も足をばたばたさせる多動気味な若者だった。ソファで体育座りするような。ちょっとした痛さがあった。そのキャラクターと本作をセットとしてあわせると、ああなるほどね、不思議なことがしたいのね、歌詞もなんかよくわからないし。というか、disk1はどこにあるの、とか。声が聞き取りにくい、とか。終わりなきとかが続いていく。
それでも、この若者がやろうとした坩堝は、前代未聞の1stとして誉れ高くあってしかるべきだと思う。雑多な音楽をぐちゃぐちゃにして、ポップネスと破綻を共存させ、めんどくさいことに、名曲を書いてしまうという才能。個人的にいまいちなのはM6のみ。真の名盤というのは、常に完成を拒むために、1曲箸休めを配置するという持論が当てはまる。というかその持論が適用されるほかの盤は、日本が誇る盤、第一位の中村一義の『金字塔』しかないけど。
本作の白眉はもちろん、M7'ガリバー2'。イントロから高まる期待感。Aメロの納得感。サビの引き。10分を超える大曲なのに、飽きさせない。「僕はなんにも わかってない。自分のファンタスティックなからだのみを信じる。歌を。詞を。・・・・・・(書くとき発汗するんだ)」。90年代後半に中村一義が携えた日本語詞のある境地は、新感覚派として、いたいけな中学生から文学を奪い去った。七尾旅人は、それをもう少しナイーブに、もう少し痛く、どうしようもない鋭利さで提示している。同じ系譜とは言わない。新感覚という便利な言葉によって立たせてもらう。何か、新しいこと、期待、それらがこめられている。サビは愚直な反復ではなくCメロ、Dメロと展開していく。物語は平板に、「君」あるいは「お前」に「泣かないで」と願う。願うことは指示ではない。そこには、愛がある。この曲は全体として圧倒がある。
さて、M9'「思いつき!思いつき!!」なに?「キャトル・ミューティれるの。」'のような曲を作れる天才青年、七尾旅人。'コーナー'で、衝動を抱えながらまるで何でも知ってるかのように、ラストの'左腕◇ポエジー'で、そのごちゃごちゃの才能をまくし立てて終わるように、本作は圧倒を鳴らしていた。本作よりも刺激に満ちた盤があるとすれば、どうか聴かせて欲しい。
黒歴史として封印できないカロリーを与えられてしまった本作は、どうしようもなく音楽史に刻まれてしまっている。かわいそうな七尾旅人。