Coil : Ropeland Music
ARTIST / Coil
TITLE / Ropeland Music
LABEL / テイチク
DATE /1999
TITLE / Ropeland Music
LABEL / テイチク
DATE /1999
1877。過去盤レビュー。日本が誇る、歌詞も曲もよいユニット、それがコイル。この1stを擦り切れるまで聴いた僕たちの青年時代、かくありなんである。M1の箱舟からして良い。世界観がある、などと陳腐に今でもいえる。岡本定義と佐藤洋介。二人がそれぞれの役割を負いながら、成立している「宅録」という形式。僕たちが、憧れた自宅スタジオ「ロープランド・スタジオ」のなかで、作られるその辺の少もない日本作家たちを圧倒する音楽たち。ちなみにこの場所は中村一義の「状況が裂いた部屋」と同じように、多くの名曲を生み出した。それはさておき、まず岡本さんの声がよい。文学への傾倒もよい。佐藤さんの裏方仕事もよいし、曲も抜群にかける。いい曲しか並んでない。最初はコミック・バンドのような印象をもたれた。それでスタートが躓いたのかもしれない。いつの間にかミュージシャンズ・ミュージシャンのようになり、オーガスタ所属の同僚たちに楽曲提供なんてことで小銭を稼ぐという。こんなにかっこいい曲たちを自分たちで作れるのに。告白すると、僕がライブに言った日本のミュージシャンはコイルぐらいなんじゃないか。それぐらい好きなわけですね。M10の'Plues'なんて、理想的なほど詩と曲が融合してる。日常の音楽を伝える。The Beatlesの匂いを探しまくっていた日々で、その響きをしっかりと届けてくれたのは、中村一義とコイルなのであった。そして。大曲を名曲として書けるか。愚直に頭に幾度となく叩き込める曲を。本作のトリを飾る「天才ヴァカボンド」。2回目のサビ前から「バカでごめんね うまくいきっこないのに まだ汚れてないとこ全部 君にあげるよ」という歌詞は僕の思想のいくらかに影響を与えている詩情である。こういう盤に出会えるかどうかが、人生にいくらかの希望を与える最低条件だと思う。名盤。