Squarepusher : Ufabulum
ARTIST / Squarepusher
TITLE / Ufabulum
LABEL / warp
DATE / 2012
TITLE / Ufabulum
LABEL / warp
DATE / 2012
1833。とりあえず買うという行為。そんな思い入れも何もなく、ただただはしたないことをやってしまう社会人の唾棄すべき振る舞い。享受するとは、エンジョイするとは、その辺に投げ捨てられているものではない。苦労すること、探す、探し続ける。想像する、願う、愛する、思う、期待する、その他もろもろを含んでいる、僕たちは、いつだってその過酷さを愛したわけで。輸入盤にこだわってみたり。本作はSquarepusherの15枚目くらいの新作。コンスタントにリリースを続け、最近ではソロベース盤を出したり、バンドをやってみたりと色気を出しながら精力的に活動している停止者。ファンとしては、適度に胸騒ぎを与えられて、適度に人生の彩りを着色する数少ない作家である。本作の巷での評判は、まだまだ出尽くしていないだろうけど、とりあえず言われているのは原点回帰である。なるほど、確かにドリルンな振る舞いで下地をかき乱しながら、抜けるような旋律が広がっている。決定的に違うのは、とにかくうわべがメロウであり、抜けすぎているというところか。もはや偏屈で友達のいない人間が、通学中や勉強中ににやにやしながら聴く類のものではなくなってしまったようだ。とても明るくて開放的。日本盤の開設では、本人の言葉が引用されていて、過去作との違いを<空間>によって表現している。それが僕のいう旋律の上張りにつながっているのかは知らないけど、この空間性は、多くの人間を詰め込みながらあらゆる垣根を越えてプレイされるお立ち台つきの箱であり、内向的なワンルームではない。しかし失われない緻密さもあって、くだらない1枚にならない、正確にいえば、音楽にさえ絶望するほど澱み切っている人にも精一杯引かせるフックをひそませた1枚になっている。半分ぐらいは響く曲、半分くらいは新しい曲、そんなイメージ。本作はトラックのそれぞれに映像が付与されていることも特筆される。そして、一番言いたいのは、TomはRichardと違って、僕たちにどこまでも優しい。