The Flying Lizard : S/T / Forth Wall
ARTIST / The Flying Lizard
TITLE / S/T / Forth Wall
LABEL / virgin / RPM retrodisc
DATE / 1980 / 1981 / 2010
TITLE / S/T / Forth Wall
LABEL / virgin / RPM retrodisc
DATE / 1980 / 1981 / 2010
1804。知ってるようで知らない、有名なようでそうでもないDavid Cunninghamの比較的有名なプロジェクトThe Flying Lizards。最近ではThis Heatのリイシューによって、名前が散見されました。前衛的なポップスを目指すという、自己矛盾を抱えた偉大なプロデューサーの仕事は、のっけから分裂症気味な狂気を提示してくるわけで。本作は、そんなThe Flying Lizardsがvirgin時代にリリースした1stと2ndを2枚にぶっわけて、それぞれに当時のシングル曲をすう曲蛇足的にぶち込むことによって構成されている。最近では各地の美術館でインスタレーションを飾ることにますますご執心の大物が、かつて何を模索していたのかを知る上では重要なリイシューである。ニューウェーブをリニューアルする市場の上に若干遅れての登場ではあったけれど。「たった20ドルでヒット作は作られる」という出典不明の言説が流布するほど、彼は音楽に頓着がなかったし、現代アートなる虚妄に夢を見続ける人間が唯一与えられている発想する力なるものにどっぷりつかっていたのだと思う。実際、彼の安上がりなシングルはチャートに掲げられたようだし。数十年遅い、金と着想の癒着というポップアート的な快楽がイギリスを取り巻いたという。手法はテープやらその辺のガラクタを利用したダビーなリサイクリング。Eddie Cochranの'Summertime Blues'やThe BeatlesもカバーしたBarrett Strongの'Money (That's What I Want)'を箱庭的に解釈しなおすことで、彼は彼の善良なる身振りを示したわけだ。剽窃と引用、それもまたもはや過去化されていてもおかしくはない実践だったんだけど。しかし、むちゃくちゃななかにも、The Flying Lizardsがとらまえている空気感は80年代の新しい波をしっかりと体現している。ダブ感と金属感、そのがちゃがちゃ。さらに言えば、1stのM8の'Trouble'なんてまるで神経質な最新のミニマル・テクノのようではないか。過去にとらわれながら、現在を説明し、未来へと流れ込んでいくカオティックなさまが今でも彼の実践をニューウェーブの上位に位置づける雰囲気を生み出しているのだと思う。1stでもGeneral-Strikeというユニット名でDavid ToopやSteve Beresfordといったプレイヤーたちの協力を得ていたけれど、2ndではさらに彼に共感したのであろう人たち、たとえばRobert FrippやらMichael NymanやらThe Pop GroupのGareth Sagerやらをときに巻き込みながら、無駄な洗練へと向かっていく。それでもがちゃがちゃ感は大切にしているあたりがこずるいけど。さらっと書いてしまいましたが、実はかなり深いものを秘めているプロジェクトなので、各自勉強してレポートを提出するようお願いします。誰も追いかけることができなかった孤高の歴史的名盤。