The Tuss : Rushup Edge
ARTIST / The Tuss
TITLE / Rushup Edge
LABEL /rephlex
DATE / 2007
TITLE / Rushup Edge
LABEL /rephlex
DATE / 2007
1786。myspace。すごい新人が出た。The TussことKaren Tregaskin。そんなニュースが流れた。それはrephlexからのリリースで、見事なまでのAphex Twinフォロワーだと話題をさらった。というか、もはやこの音はRichardそのものだとささやかれた。ほぼ情報がないなか、レーベル側はそのうわさを一蹴する。この段階で、僕は本作をスルーしてしまうことになった。そして今、ようやく本作を聴いている。Richardが好む音色が多用されている。複雑なリズム系と、それを縫うように響く旋律性に、どうしようもない作家性を感じる。Aphex Twin名義での最終作は、現状2001年の"Drukqs"。彼はもうこの名義でwarpから盤は出さないと宣言した。それからAnaloadシリーズやAFX名義での編集盤などをはさんではいるものの、なんとなくその声が僕には届かなかった。そして現在、新作のうさわは間欠的に流れるものの、まだまだ確定の情報はない。そんな僕が、廃盤になったらしい本作を急いで取り寄せた理由。それは、本作が、もはやRichardの変名プロジェクトであったとほぼ断定されている雰囲気を突きつけられたからである。いくつか検証サイトもあるので、参考にして欲しい。簡単に説明すると、ひとつには本作に貼り付けられたシールに記された数少ない情報のひとつ'Published by Chrysalis'。これはrephelxからリリースされるRichardの盤はほぼchrysalisをパブリッシャーにするという点を突いている(chrysalisはロンドンを拠点とする老舗レーベル)。あるいは、2005年の段階でAphex TwinのライブセットリストにThe Tussの曲が含まれている、とかGX1という所有者が極端に少ないシンセの音色が聴こえる、とか(その所有者にもちろんわれらがRichardが含まれている、らしい)。これらは、別にRichardが協力すれば、容易にクリアできそうな論拠ではある。しかし、The TussイコールRichardというもっとも強烈な証拠となったのは、アメリカの著作権管理団体BMIにThe Tussの楽曲がRichard David Jamesの名前で登録されているという事実だった。まあ、これさえも、奇特な若手がRichardに権利を譲った可能性もあるけど。とにかく、これらを根拠として、公式がはっきりと否定しているThe TussイコールRichardという物語が強く信じられるにいたった。たかだか6曲30分強の本作が、なんとも論争的な1枚として、強固に起立している。われらがアイドルが沈黙している以上、あるいは公式が否定している以上、その真偽は置いて、もはやその物語を含めて本作を楽しむのが正解なのだろうが、なんとも胸が熱くなるのは僕だけではないはず。もちろん、致命的な出遅れ感を味わっている。心地よく、喜ばしく。なぜならBGMが素敵だから。フォロワーだろうが、本人だろうが、とにかく愛しい音楽。僕たちが待ち続けている音楽。多少小さくまとまっている印象があるが、それでもねっとりと濡れる満足感がある。本作をitunesに取り込むと、アーティスト欄がAphex Twinとなるのも、笑える。すべてが真偽を宙吊りにした楽しさに満ちている。さてRichardさま、そろそろわれわれ愚民どもに、天才の音楽を届けていただけないでしょうか。それを生きる糧とする人間が、ここにいます。