浜渦正志 : SaGa Frontier II Original Soundtrack
ARTIST / 浜渦正志
TITLE / SaGa Frontier II Original Soundtrack
LABEL / digicube / square enix
DATE / 1999 / 2006
TITLE / SaGa Frontier II Original Soundtrack
LABEL / digicube / square enix
DATE / 1999 / 2006
1952。3枚組み。それまでほぼ伊藤賢治が担当していたサガシリーズの音楽がとうとう他者に引き渡されたということで話題になったりならなかったり。その辺の裏事情の内実は分かりませんけれども、グラフィックやシナリオを含めた世界観の構築がそれまでのサガシリーズとかなり異なっていたからかもしれません。本作以降、現在に至るまでリメイクを除くとサガシリーズの新作が発表されていないということを考えると、本作が結構な問題作だったといえるのかもしれない。あ、アンサガとかいうのがあったか。まあそれはいいや。問題作というのは、本作が異様なまっとうさを持っていたからであり、むしろギュスターヴのシナリオなどは涙なくしては見れない内容になっている。いうなれば、らしくないという感じ。僕自身、サガシリーズのなかでプレイしたのは本作が最後となっている。イトケンに比べると、本作で浜渦が見せる手法はまったく異なるものである。本作が異様なのはイベントや各場面ごとの音楽をドラスティックに変えることはせず、まるで変奏曲のように限られた旋律を機軸に据えてそれをアレンジとして提示している点にある。つまり、どこを切り取っても、全体として大体同じ旋律が与えられているのである。鍵盤によって鳴らされるその旋律は、本作の核となっており、限定するという賭けに見事に勝利した神がかり的旋律である。この旋律が着想された時点でこのゲームの音楽が未来永劫の名曲群になることは保証されていたともいえるでしょう。しかし一方で、東京藝大声楽科というあまりにも西洋音楽(というかいわゆるクラシック)を背景にしていそうなバックグラウンドを持つため(実際どのような内容を学んだのかは知らない)に、昨今のフォーマリスティックなゲーム音楽からは乖離する傾向にあるのも事実である。そこにはプログレ的壮大さというよりも、オーケストラ的壮大さが広がる。本作でも要所要所に顕在化するのは久石譲的な感性であり、音であり、展開である。本作は、それゆえゲーム音楽という名目上のカテゴリーに属していながらも、リスナーをそこに限定しない開かれた可能性も秘めているといえる。音色も、生音をかなり反映するようになっている。ゲームは進化し、もはやフォーマリスティックな価値は減退してしまったから、グリーンバーグ的なモダニズム人間にとってはやや残念な気持もあるけれども、本作が見せる完成度はその価値をゼロ化したところで失われるものではない。今でもBGMとして十全な価値を持っているのだ。買え。