植松伸夫 / 伊藤賢治 / 笹井隆司 / 藤岡千尋 : Sa・Ga全曲集
ARTIST / 植松伸夫 / 伊藤賢治 / 笹井隆司 / 藤岡千尋
TITLE / Sa・Ga全曲集
LABEL / ntt出版
DATE / 1991/2004
TITLE / Sa・Ga全曲集
LABEL / ntt出版
DATE / 1991/2004
1471。2枚組み。disc 1が1(1989)と2(1990)、disc 2が3(1991)の音源を収録しています。制作にあたったのは1と2が植松と伊藤。3が笹井と藤岡です。サガシリーズは言うまでもなくスクウェアの代表的なRPGのタイトルですね。そして本作の歴史性を述べるとすれば、2が実質的にイトケンのデビュー作ということでしょうか。たしか20代前半だったのではないか。その後のサガシリーズは現在のところサガフロ2とアンサガを除いてイトケンが引き継ぎました。植松はもちろんFFを手がけたことで有名です。2人ともゲーム音楽を語る上で抜きでは語れない天才なわけですが、多くの人にとってその名前は顕在化しません。影響力を考えるならば、日本のどんな作曲家よりも影響力が強いでしょう。世界的、といえる日本の音楽家なわけです。イトケンはどうかわかりませんが。さて、ゲーム音楽というものを考えたとき、そのラディカルな特性が際だつのは間違いなく初期ハードのものに限ります。現在では、音色などの制限もほぼ解消されることで、既存の形式、たとえばクラシックなどへと歩み寄るという事態になり、もはやゲーム音楽はゲームに添えられた多種多様な音楽という以上に広範なものになりました。ところがたとえばGBなどにおいては、3和音という制限があり、さらに音色も各メーカーがスペシフィックなものを所有することで俳諧的な美学を備えていたわけです。まさにゲーム音楽という枠内において、それらの音楽は機能していた。それゆえ僕はGBのみを与えられて幸福だったと思うわけです。サガの基盤は間違いなく植松が容易したものです。メインテーマ、涙を拭いて、GBではおなじみのEat The Meatなど、しっかりとその世界観が与えられているといえる。そこに弟子としてイトケンが参入してくる。いまではイトケン節とまで呼ばれるにいたったプログレやメタルに由来するコンポジションは本作ですでにあらわれている。必殺の一撃、死闘の果てに、Never give upといった名曲群はまさに彼にしかつくれないものだと思います。しかし植松も師匠としての手本を示すために、Save the worldなどの名曲を提示している。単純に見えて複雑、単純さゆえにその構成要素のすごさが直観できる。いわゆる思い出補正を抜きにして、聴くべき音楽といえるでしょう。disc 2のラストは植松によるアレンジヴァージョンがシンセな感じで収録されています。僕はGB原音至上主義ですからそれほどひかれませんが。ちなみに僕にとって人生初のRPGが3でした。河津秋敏が関わってないということでサガ信奉者から排除されている3ですけれども、それだけではなく音楽が植松でもイトケンでもなく笹井が中心になっているという点もある種のオーセンシティからのずれとして認識されるのかもしれない。サガフロ2も評価が分かれるところですし(サガフロ2の音楽は変奏曲形式でかなり画期的なのだが)。しかし初期3部作では3が一番ゲームバランスが優れてるんですけどね。ナラティブもしっかりしてるし。音楽もいいんですよ。笹井は『ルドラの秘宝』を手がけたことでも有名です。1と2はそのラディカルさと独特の語り口から(特に1は)語り草になっていて、そこにもやはり大きな魅力があるのですけど。サガのおかげで神殺しが僕のなかで重要な概念となりましたとさ。2004年に再評価の声が高まり、復刊ドットコムの尽力でリイシューされ入手がたやすくなりました。このブログ全体の趣味を根底で支える基礎盤として必修です。