Diefenbach : Run Trip Fall
ARTIST / Diefenbach
TITLE / Run Trip Fall
LABEL / we love you
DATE / 2004
TITLE / Run Trip Fall
LABEL / we love you
DATE / 2004
1443。myspace。Lサイドによるレビューはこちら(ポストロック論を含む)。さてLのほうがご執心だったDiefenbachである。1stはすごい名盤らしい。本作は残念ながら2nd。アマゾンのレビューなどによれば、we love youとの契約によってようやく世界流通できるようになったらしい。デンマーク出身。5人組という情報が散見されるが、現在は4人組らしい。Allan Mattson(ベース、ボーカル)、Kenneth Sarup(ギター、ボーカル)、Lasse Lyngbo(ギター、キーボード) 、Stefan Gejsing(ドラム)という標準的な構成。さて、僕としてはそもそも「ポスト・ロック」なるタームに対して距離をとっているわけですけれども、本作がそのようなレッテル(まさに大文字のポストロック)を貼ることによってある程度の共通了解を提出できるということには同意します。たしかにこれだけ「ポストロック」が氾濫すれば、その名称はコミュニケーションの手段として非常に有効なんです。「どんな音楽?」「ポストロックです」。これでなんとなくわかる。結局プログレでもなんでも、言語的コミュニケーションの経済性、あるいは経済性そのものによってマーケット的に要求される言葉ですから。しかしプログレというのは、ある種の時代と結びつくことによって、もはやほとんど閉じられているのに対し、「ポストロック」は現在進行形で拡大し続けているところに大きな問題がある(もしかしたらすでに「ポストロック」も閉じられているのかもしれませんが)。つまり「ポストロック」というだけでは何も指示できない状況に今後ますますなっていくだろうと。先ほどは「ポストロック」というだけでなんとなくわかると書きましたが、これは僕が想像する一般論であり、僕なんかはもう「この音楽はポストロックです」といわれても何なのかわからない。ゆえに「どのポストロック?」と問わなければならないのである。僕にとっては経済性もひったれもない不便な言葉なのです(といいつつ実は文脈判断でわかるものですけど)。しかし決して「ポストロック」という言葉がそもそも無効なのか、と問われるとそうではないでしょう。僕はTortoiseのみが文字通りのポストロックであるという言説にも賛同しますが、いくつかの複合的条件によってポストロックは可能であると考えています。たとえば、ボーカルの不在、反旋律主義(反復の使用や粒としての音響への意識)、ドラムやベースの前景化などなど既存のロックイディオムの解体、それに加えて重要なのが他のテクノロジーの導入をはじめとする反衝動的な(知性的な)手法でしょう。これらひとつではおそらく不十分です。これらが複合的に結びつくこと、そして(これまた経験的にしか例示できませんが)文字通りロックであること、これが要求されるのです。僕はポスト・ロックというものをロックでをある種否定的に乗り越えながらロックであるものであると勝手に考えているのでこのように非常に皮相的に条件付けました。もちろん文化論的に、あるいはその条件も踏まえて「ポストロック」を定義することは不可能ではないかもしれない。しかし少なくともTortoiseを起点とし、あるいはそれを終点として捉えるにしても、上述のような端的な条件付けはある程度有用でしょう。それまで何度も既存のロックイディオムは解体されてきたけれども、それらもまたロックのサブジャンルに併合され、時代区分と密着しながらある種の様式性を獲得してきた。それらとは異なる形でポストロックがポピュラー音楽の歴史書の項目に導入されるような様式性を周知させるには、もう少し経年を待つ必要があるでしょう。そのときの手がかりはおそらく上述のような条件になると思います。もちろんこれは個人的なポストロ論ですけど。さて、では本作はそう考えたときに「ポストロック」なのかR的ポストロックなのか、と問われれば答えはほぼ半々ですね。その時点ですでに中途半端に感じる。なぜLがここまで持ち上げるのでしょうか。たしかに標準以上のいい盤だが、それほど細部への意識があるわけでもないと思うし、革新的な手法でもない気がするが・・・。曲単位では聴かせるものも多い。しかしLサイドがあれほど持ち上げるということは、かなりのハードルになるわけで。とここまで疑念を膨らませた時点で、やつがいいと言った盤は大抵1年遅れでよさに気づくということを思い出した。たとえばPinback。また同じ罠にはまるところだったぜ。まあ冗談はさておき、それほど盛大に名盤とは言わないまでもかなりいい盤であることはたしかです。