Glenn Gould : J.S.バッハ:フーガの技法
ARTIST / Glenn Gould
TITLE / J.S.バッハ:フーガの技法
LABEL / sony music
DATE / 2007
TITLE / J.S.バッハ:フーガの技法
LABEL / sony music
DATE / 2007
1169。グールド紙ジャケコレクションの8枚目。1962年にトロントで録音。帯には《グールドがもっとも高く評価したバッハの作品―オルガニスト、グールドを聴く》という文句がある。そう、この盤でグールドはオルガンを弾いているのである。実はグールドは子供の頃からオルガンを学んでおり、14歳で世界各国の優れたオルガン奏者5名が出場するトロントのサヴァン・シリーズに参加したというゴルゴ13的な逸話を持っている(これはデューク東郷がオルガンの名手であるという意味ではない)。僕のようにほとんどGouldを知らない人間にとってはとんだ隠し球である。さて、このフーガの技法はバッハの生涯最後の作品集としてもくろまれ、そしてその15番を完成させる前にその視力の悪化から死を迎えてしまうという絶筆にあたるものである。それゆえある種のバッハの生の残り香ともいうべき精神が宿っていたのかもしれない。今はどうかわからないが、おそらく中等教育で教えられるバッハの作品としてトッカータとフーガという曲を聴いたことがある人も多いと思うが、その世界の論理を解き明かし、神の真理へと肉薄させるような機械的な響きは、インヒューマンであり、非感情的であったという記憶が残っていないだろうか。このフーガの技法でも、その主題が執拗に、数学的に呼応されることによってある種の非日常性が演出されているように感じる。このメカニカルさが僕がバッハから感じるある種のテクノ性であることはいうまでもない。構築されることで堅牢なテンポラリティが生まれ、そこには人ならざる物語が透けているのである。