Glenn Gould : J.S.バッハ:フランス組曲第1番~第4番
ARTIST / Glenn Gould
TITLE / J.S.バッハ:フランス組曲第1番~第4番
LABEL / sony music
DATE / 2007
TITLE / J.S.バッハ:フランス組曲第1番~第4番
LABEL / sony music
DATE / 2007
1170。グールド紙ジャケコレクションの9枚目。帯には《鬼才グールドによる、華麗なる舞曲集》という文句が添えられている。この盤は1972年から1973年にかけてトロントで録音されたもので、第1番から第4番までが収められている。バッハにはフランス組曲のほかにもイギリス組曲という国名をあたえられた楽曲郡がある。しかし解決によれば、なぜそれがあえてフランス、イギリスといった国名をもつのかという理由は判然としないようだ。現代でも美術館にいけば見られるように、タイトルが成立する以前の絵画が通称で呼ばれるのと同じ感覚だったのかもしれない。フランス的な趣味で作曲されている、あるいはそのようなことはありえないといった音楽学上の議論も当然ながらあったようである。バッハの作品のなかでも格段にメロディアスであることは一聴すればわかることであるが、このことは、常に深遠な構造を隠し持った楽曲を生み出した探求者バッハが本気でポップスを作曲したということなのかもしれない。それとともに解説にはレスリー・ガーバーによる次のような指摘もある。「《フランス組曲》の音楽が持っている舞曲的な性格についてはたびたび言われてきたが、この音楽が実際に舞踊に使われたことを示す記録は何ひとつない。実は、使われている舞曲形式のほとんどは、作曲当時すでに時代遅れだったのである」。僕自身は、この曲でどのように踊るのかという疑問を持つ21世紀の人間であるが、もしかしたら当時では現在のディスコ的位置を占めていたのではないか、と想像を逞しくしたりしてニヤニヤすることもできる。「...この作品は何よりも豊かな感情表出を目的として書かれたものであることを、演奏する側も聴く側もまず第一に念頭に置くべきだろう」と、解説は締めくくられているが、たしかに演奏してみたいと思わせる表面をもった楽曲郡である。