Glenn Gould : J.S.バッハ : フランス組曲第5番&第6番 / フランス風序曲
ARTIST / Glenn Gould
TITLE / J.S.バッハ:フランス組曲第5番&第6番 / フランス風序曲
LABEL / sony music
DATE / 2007
TITLE / J.S.バッハ:フランス組曲第5番&第6番 / フランス風序曲
LABEL / sony music
DATE / 2007
1171。グールド紙ジャケコレクションの10枚目。1971年と1973年にトロントで録音。帯には《エレガントで革新的―グールドの挑戦》と記されている。よくわからんコピーだ。この盤には、タイトルどおりフランス組曲の残りのふたつとフランス風序曲が収められている。再生して第5番のI.アルマンドを聴くとその異常なまでのカンタービレ感覚に度肝を抜かれるかもしれない。かなり旋律的だ。おお、と一瞬思うくらい。さて、フランス組曲とは異なり、フランス風序曲はバッハ自身によってタイトルがつけられたことは間違いないらしい。そしてフランス風序曲は、イタリア協奏曲同様、チェンバロに管弦楽的な音楽の性質を付与するという試みであったらしく、そこからはオーボエ、ファゴット、フルートなどさまざまな楽器の組み合わせを感じさせるという。そしてその構成もフランス管弦楽組曲によくみられるものであるとも指摘されている。もちろん僕自身はよくわからない。冒頭は厳粛なトーンを確立し、それにより軽快な舞曲が続くというナラティブが存在したようだ。フランス組曲のほうに話を戻すと、そもそも全6曲で一気につくられたものではなく、第5番と第6番は別に時期に作成されたとされており、それがGouldによるバッハの作品集にまとめられるときも反映されたのかもしれない。ディスコ的性格をもつと感じられる時代遅れの舞曲アルマンド、クーラント、サラバンドが楽章として挿入され、さながらメドレーのようなきらびやかさと楽しさを持ったフランス組曲は、ただの懐メロで終わることなく、当時も実際に使われていたガヴォット、ポロネーズ、ブーレ、メヌエット、ジーグといったそれぞれ地域的な性格を帯びた舞曲も混ぜ合わされおり、おそらく聴衆は、「バッハさんのセンスはええわぁ、わかってはるわぁ」と感じていたに違いない。グールドの演奏はそのバッハの精神を冷徹に見つめるかのようにざっくりと楽曲に切り込んでいるように感じられ、これでは聴衆は踊るのをやめ、静止したままその奏者をじっと見詰めるよりほかないのではないかと思わせる。しかしそれと同時に、ときに軽やかに、ときに濃厚に、Gouldは自分自身でバッハの骨までしゃぶりつくすような演奏でオルガズムを感じてもいる。このなんともアンビバレントな凝縮がグールドの演奏にあるにゃー、と勝手に印象した。とりあえず連続グールド・レビューもこれで一段落。実はグールドによるバッハの紙ジャケシリーズ第2段もあるのですが、それはいつレビューするかは未定ということにする。疲れたから。興味のない人には申し訳ありませんでしたが、だまされたと思って、あなたもクラシックに手を出してみるのです。今すぐやるのです。やってやるのです。