Glenn Gould : J.S.バッハ:ゴールドベルク変奏曲(1981年録音)
ARTIST / Glenn Gould
TITLE / J.S.バッハ:ゴールドベルク変奏曲(1981年録音)
LABEL / sony music
DATE / 2007
TITLE / J.S.バッハ:ゴールドベルク変奏曲(1981年録音)
LABEL / sony music
DATE / 2007
1166。グールド紙ジャケコレクションの2枚目。帯の文句は《死の直前にデジタルで再録音された、奇跡の遺作》。1981年にニューヨークで録音された本作は、まさにGouldの生涯において常に念頭にあったであろうゴールドベルク変奏曲の再録である。解説によれば、Gouldは自分の作品をめったに再録しないという。ましてや天才の登場として持ち上げられた1955年の録音があるにもかかわらず、あえて再びゴールドベルク変奏曲に向き合ったのは、それだけGouldが偉大なる音楽家バッハによる本作に執心し、それを愛していた証拠であろう。解説によれば、Gouldが再録音に踏み切った理由は、ひとつに、新しい技術の登場であり、もうひとつが「主題と変奏の算術的呼応」に基づく作品の再検討を求めたいというグールド自身の願望にあったという。Gouldはその意味では、世間一般に流布している芸術家らしさの特性をもつのではなく、研究熱心な解釈者としての学者、最高に音楽的な学者だったのではないか。解説には本作の録音に立ち会った共同プロデューサーのSamuel H.Cartherの報告も記されている。それによれば、Gouldはバッハ同様に「活火山のようおな人物である。彼は音楽的洗練の体現者である。自分が音楽にどうなってほしいかを常に理解していると思えるからだ。彼は音楽が彼の意に反して勝手に展開することをめったに許さなかった。音楽の実権を握っているのは彼のほうなのである」。遺作である本作では、かなり情緒的な没入を感じる。そこにはオートマトンとしての演奏者どころか、以前よりさらに感情的な詩人が、キケロ的弁論術を備えた詩人が自分の世界に没頭しているのである。本作が録音された翌年、1982年10月4日に偉大なる詩人は死んだ。そしてその名前は伝説になった、という。