Glenn Gould : J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻 Vol.2(第9番~16番)
ARTIST / Glenn Gould
TITLE / J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻 Vol.2(第9番~16番)
LABEL / sony music
DATE / 2007
TITLE / J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻 Vol.2(第9番~16番)
LABEL / sony music
DATE / 2007
1163。グレン・グールド紙ジャケ・コレクションの6枚目にあたる。1963年ニューヨークにて録音。この腕を組んだGouldポーズは若かりし彼の自身とナルシズムを顕在化させているようで。僕の好きな9番ホ長調から入るこの盤にかんしてそれほど多くのことを語ることはできない。ともかく平均律クラヴィーア曲集の真ん中にあたるこの盤でGouldの性質が再び露見していることは間違いない。第10番ホ短調のプレリュードであるM3は、リヒテルの演奏では尋常じゃないほどの緩急が出現し、心をかき乱すのだが、Gouldはそれほど大きな起伏を設けないために、個人的には表層的な物足りなさを感じないこともない。しかしそれゆえに第12番ヘ短調のプレリュードM7における感傷的な旋律は、それを抱えて歩く中年の足取りのように重く、悲しい。M8のフーガにいたって、その物憂げは速度をともなって解消し、かつその世界をより強固に沈ませる見事さがある。Gouldは、テクノ機械と化したリヒテルよりも、ナラティブを強く主張しているように感じる僕は間違っているのだろうか。ときに物憂げに、時に牧歌的に、ときに楽しげに、その感情をバッハの理論的楽譜からいっそう深く汲み取るのは、演奏家=解釈者として物議をかもしたGouldならではの快楽であるように思う。帯の文句は《理論を越えた新地平―「平均律」の新しいかたち》。なるほど、と思う。