Cordelia's Dad : Spine
ARTIST / Cordelia's Dad
TITLE / Spine
LABEL / appleseed recordings
DATE / 1998
TITLE / Spine
LABEL / appleseed recordings
DATE / 1998
Albiniとの共同プロデ、録音もAlbini。マスターはJohn Goldenm。4人組み。アコーディオン、バンジョー、フィドルなどが利用されており、アメリカの伝統音楽(というものがあるのかは知らんが)に根ざす傾向と推察される。それゆえ注目されるのは、時間=物語という側面であり、Albini的な音の空間性ではない、と勝手に判断する。音としてはややくぐもっている印象で、原音主義的ではあるけれども、適切ではない気がする。ボーカルも含めて、最初はあまり興味が沸かなかったのだが、通しで聴いてみると自分たちのルーツをうまく自分たちの現代性に溶かし込んでいるという感じがしないでもない。Tim Eriksenというバンジョー担当がハードコア畑出身らしく、気骨に満ちた伝統への回帰と見ることができるかもしれない。よくもわるくも、伝統音楽というものは、リスナーに映像その他の付随する要素を喚起する母体として機能する。つまり、過去へと引き寄せることでわれわれをがんじがらめにするという。その意味で、昨今の社会学的アプローチに接近した音楽学における民謡研究の動向などは、たしかにモダニズム音楽学に対するアンチテーゼとして、音楽の背後にあるもの、広くいえば文化性などに没入していく状況をうまく利用しているといえる。結局は音楽を作り上げているものが、決して純粋音楽のようなものではなく、演者、受容者、楽譜、メディア、会場その他のそれまで付随的なものとして排除されてきたものの総体であるという認識である。それはそれでいいと思う。しかし、じゃあわれわれが今聴いている音の揺らぎ、空間的揺らぎは何だ。ナラティブに回収されない音の空間性は。