Brian Eno : Ambient 1 - Music For Airports
ARTIST / Brian Eno
TITLE / Ambient 1 - Music For Airports
LABEL / eg records
DATE / 1978
TITLE / Ambient 1 - Music For Airports
LABEL / eg records
DATE / 1978
1114。奇跡の1枚にして、もはや語ることは残されていない傑作。それがこの「空港のための音楽」です。多くのフォロワーを生み出し、多くの人々の無意識下に刻み込まれている。それはアンビエントという名前を用いるすべての作家にいえることである。まさに近代美学が目指し、ポストモダン以後の美学によって捨て去られた芸術の自律性というものがここには残っているようにも思われる。まあ副題によってこのかんぐりは通用しないことがわかるが。しかし、この音楽ほど「ただ鳴っている」という言葉が相応しいものはない。こちらに感情的なアプローチをなさず、音楽が主体的に生起している。まさに聴いてるものにたいして、我関せずというかたくなな存在を主張するのである。個人的な話をすると、初めてこの盤を聴いたのは数年前にさかのぼるが、実は自分で持っていなかったということもあり、聴きたいときに聴けない状況であった。というかこの欲望を表象する物言いは実は不正確といわなければならないのだが。いや、もしかして持っていてその事実を忘れ去っているのかもしれない。よく知られているようにM1で最高のピアノ演奏を行っているのはRobert Wyattである。M2でエンジニアを担当してるのは先日Moebiusとの競作をレビューしたConny Plank(参考:12)。全4曲を通じて完璧なまでに無関心の音楽を追求した結果、現在の美学では瀕死の状態であるアウラを再び獲得しているようにも感じられる。そこでは鳴っている環境に一定の境界を張り巡らせることにより、我々が近づく事ができないような状況を作り出す。それはある種環境を意味する「アンビエント」という言葉とは矛盾するものかもしれない。この奇妙な二律背反はしかし、神聖な環境へと部屋を満し、音が鳴る瞬間から徐々にわれわれを慣れさせるということで解決しているようだ。この盤の回転を停止するとき、部屋の空気が軽くなり、実は高ぶっていた心臓に気付く。恐ろしく、そして、それゆえ完璧な1枚、それがこの傑作である。