10cc : S/T
ARTIST / 10cc
TITLE / S/T
LABEL / uk records
DATE / 1973
TITLE / S/T
LABEL / uk records
DATE / 1973
1067。さて10cc。偉大なるThe Beatles不在のイギリスでその卓抜なアイディアとセンスにより、国民に英国ポピュラー音楽がまだ健在であるということをアピールした10cc。てか名前は重々承知であるがなかな自分の拡張のなかで枝がたどり着かない大御所というののひとつが10cc。Eric Stewart、Graham Gouldman、 Kevin Godley、Lol Cremeという4人が作り上げた世界は、もう少しはやくしっかりと聴く機会があればと思わせる素敵さを秘めている。というか若かりし頃にThe Beatlesのフォロワーをあさっていたころにもう少し丹念なスキャナーが必要だったわけだが。世に10ccありと知らしめた1stだが、一般的には3rdの"Sound Track"が名盤であるという。さて、巷の評価では10ccらしさがこの盤ではまだ現れていないということなので、この盤から一気に10ccを把握することはできないにしても、なかなかよく響きそうである。というのは、個人的にその理由は明白で、とあるバンドにそっくりだからである。偉大なるアメリカのBであるThe Beach Boysである。The Beatlesとのせめぎあいを世界的に演じたバンドを、イギリスのバンドが選択したというのはかなり面白い。というかM1を聴けば明らかにbrother records期のThe Beach Boysのそれ、具体的には"Sunflower"と"Surf's Up"のそれである。露骨過ぎて噴出しそうになる。もちろん全一色がそれというわけではないM2はThe Beatlesのパロディを展開している。というか全体的におそらく意識的にやっていうのであって、当時の文脈に置かれればその精神が輝きを増すのだろう。そして単なる模倣に終わるのではない。優れたパロディ精神とは詩人の詩人にしかできない改変的翻訳なのである、とノヴァーリスならいうだろう。うまいことやってる。職人的技芸の集積。笑いのセンスと音楽センスの偉大なる邂逅を目の当たりにしたとき、10ccにたどり着くまで時間がかかったなーと感慨にふけるのである。名作。