To Rococo Rot : S/T
ARTIST / To Rococo Rot
TITLE / S/T
LABEL / kitty-yo
DATE / 1995
TITLE / S/T
LABEL / kitty-yo
DATE / 1995
1008。おなじみの、と書いてみて、実はまだこのブログで紹介したのは1枚だけであるという驚愕の事実。なんか2,3枚はレビューしているものとばかり思っていた。それほど、個人的には名前を目にする機会の多かったTo Rococo Rotです。それこそこの手の音楽を聴き始めて、探求し始めたころから名前を知っていたように思うので長い付き合いであるし、思い入れも少なからずある。90年代も後半に差し掛かり、いい具合に土壌が築かれ始めた頃の盤であって、まだ電子性へと拘泥することなく、たしかなドラミングとベースがバンドとしてのスタイルを主張しているように思う。思えば、この人たちの音楽がロックというカテゴリーに割り当てられていたのは、この頃の作風に由来するのかもしれない。もちろん形容詞はポストであるが。ビートの無慈悲な着実さは70年代ジャーマン・プログレのそれを受け継ぎ、シンセやターンテーブル、テープを駆使しながら展開していくという方法は、おそらく斬新なものであったろうし、最先端を進んでいたということは疑いようがない。「ポスト」という形容詞がTortoiseによってマーキングされなければ、To Rococo Rotにも十分にその資格があったし、実際にそうよばれもしたわけである。やや電飾に乾きが欠けるために、バンドスタイルにはそぐわないと個人的に思うそれ以前の音響を引きずっているように思われるが、その辺は目を瞑ってもよいように思う。ベースのフレージングは反復性も含まれ、旋律に解消されないという「ポスト」の条件を満たしてもいる。ふむ、正直近作は当初とは別の文脈で楽しむものと思っていたが、おそらく1996年当時にこの盤に出会っていたならば、時代を先どる鋭敏な嗅覚が証明できていたかもしれない。現在性の点では微妙かもしれない(かれらが幾分か方向転換したことも証となろう)が、聴いておいて損はないと思う。興味深い。てかkitty-yoのこの頃の動向がやや気になるな。レーベルサイトによるとkitty-yoで手に入る最古の盤ということになっている。古典か。