V.A : Bliss Tech
ARTIST / V.A
TITLE / Bliss Tech
LABEL / pitchcadet / aii
DATE / 2001
TITLE / Bliss Tech
LABEL / pitchcadet / aii
DATE / 2001
pitchcadetとaiiのコラボコンピ。このコンピにも参加しているJoshua TrebleとAccelera Deckによって運営されていたaiiはすでに消滅したらしい。ともに90年代後半から2000年初頭にかけて興隆したIDMと呼ばれる作風をもつ作家を多く集めているように感じられ、この盤もこの頃の冷たい熱気を伝えている。ここでいうIDMとはざっくりと個人的な形容をするとすれば、やや変則の低音ビートと美麗なやや高音のかぶせによってバランスのとられる電子音楽と考えてください。neo ouijaやmerckといった今はなき名レーベルを想定してもらって良いのではないか。参加者はKid606のリミックスを手がけ、planet-muからリリースのあるLexaunculpt、morr musicを中心に活動するPhonem、Hoodの盤にも参加していたStewart AndersonによるSteward、neo ouijaからリリースのあるBauri、現在押しも押されぬ人気者であるKettel、Tim Heckerによる別名義Jetone、dinやcity center officeからリリースするArovaneなどなどの面子をそろえており、分かる人には結構な豪華さがあるように思う。pitchcadetからリリースのある作家はここで上げられている中にも何組いるがやはりaiiに所属したという作家はあまりいないように思う。その辺の問題がレーベル存続の問題となっているのかもしれない。僕のようにこの領域に快を見出す人間ならば十分楽しめるコンピであるが、もちろん何かしら重大な進展があったり、発見があったりするわけではない。この領域が抱えるある種のマンネリズムはなかなか解消できないものであり、それゆえ発展的性向を持つ人々はあまり関心を抱かないようだが、他のポピュラー音楽と比べるならばある種の構築美と叙情性はかなり秀でており、革新の余地を見出すのが困難であるほど方法論その他が完成しているともいえなくはない。それを超えていくのが課題であるのはもちろんだが。そう考えると、領域で囲まれることで同一性を与えながらも、それぞれのオリジナリティが領域内で緩やかなヴァリアントを形成していくという全体の運動を眺めるというのも面白いのではないだろうか。少なくともこの領域には洗練と適切さがある。それが重要だと思う。