Tim Buckley : Lorca
ARTIST / Tim Buckley
TITLE / Lorca
LABEL / elektra
DATE / 1970
TITLE / Lorca
LABEL / elektra
DATE / 1970
息子のJeffとよく間違えるTim Buckley。28歳の若さで亡くなったカリスマの必要条件を備えているにもかかわらず、いまいち名前が流布していない。知っているひとは知っている過小評価されている作家として名前が挙がるようです。Lサイド経由で名前を聞いたのですが、個人的にこちらの嗜好領域に近いだろうと判断し手に入れました。たしかにLが指摘しているようにかなりの奇盤です。5thの"Lorca"、そして続く入手困難な"Starsailor"にかけて、かなり難解なアプローチをとっていたようで、この盤が咽喉につっかえるというのも不思議ではない。実際に聴いても、たしかに咀嚼が困難である。ごほごほ咳き込むというよりは、その直前、のうっという感覚が持続するといった感じだろうか。もっとも近しい感覚を抱かせるのはJandekのように思うが、Buckleyにはおしゃれな服を着たゆとりというものが漏れ出しているように感じる。それは気取りとして嫌悪されるのではなく、先進的貴族として、アウトサイダーな貴族としてやや僕の関心を引く。また、Jandekの引きずるような晦渋とは異なり、どこまでもたおやかで緊張感をはらんでいる。これはバックで採用されているややジャズに近似する方法論によるものだろう。面白い内的構成である。楽しい気分にはならない。しかし豪華である。M1が9分もあり、5曲で40分弱というのもフォークを基調にしているにしてはやや長い。かなり意欲的な作風で時代に切り込んで言ったという意味ではZappaよりもがけっぷちでの勝負といえるかもしれない。この盤でベースを担当したJohn Balkinやプロデュースを行っているDick KuncはFrank Zappa率いるThe Mothers Of Inventionの"We're Only In It For The Money"に参加しており、その後の動向からもTim BuckleyがZappa文脈におかれる数少ない著名な作家の一人ということは注目に値するだろう。長く付き合える盤であり、敬意を表して傑作認定しておく事にする。