Robert Wyatt : Old Rottenhat
ARTIST / Robert Wyatt
TITLE / Old Rottenhat
LABEL / rough trade / thirsty ear
DATE / 1985 / 1998
TITLE / Old Rottenhat
LABEL / rough trade / thirsty ear
DATE / 1985 / 1998
Robert Wyattも現在のリスニング状況というよりも、その憧憬は過去にさかのぼる。確か、昔レコード店で見つけ出したその印象的な緑色のジャケ、どのような文脈のもとにそれを引き出したか忘れてしまったが、日本盤の帯には小山田圭吾が推薦しているという文字が掲げられ、天使の歌声という言葉が記されていた。しかしいまいち音がつかめなかったので、そのときはじっとためらい、結局手を出さなかったのだと思う。その後Soft Machineを聴き、Robert Wyattがそのグループの元ドラマーであったということを知る。そして不遇な事故によって下半身に障害を負い、車椅子生活を強いられるという話も聞いた。ナラティブの上で強く踊り出したRobert Wyattという人は、決定的に重要さを帯びているということを感じながらも、決定的に入り口を覆い隠しているように思えた。その意味では高嶺の花でもあった。Lサイドが先に手を出してそれを聴かせてもらったように思うが、僕にとってはこの盤が初めて買ったRobert Wyattということになる。千人のような印象はまさにずれることなく、サウンドの落ち着きと、Braian Wilsonが引き合いに出される声の重ね具合、などなどがRobert Wyattによるこの盤を構築している。あまり知らなかったが、この盤では強く自身の政治的意見が搭載されているのだが、それは各人が歌詞カードその他によって確認してもらいたい。この盤が彼のキャリアにおいてどのような位置にあるのかが定かではないが、この盤だけ聴いたとしても、そのオリジナリティと発揮される適切さを感じることができると思う。意外にも彼は2003年にBrian Enoなどを向え新作を発表した。巨星はまだ輝きを失わず、われわれの道をさえぎるのである。それまでのキャリアから伺える音楽性が溶け込み、新しく洗練された、飽きの来ない良盤。