Elliott Smith : Either / Or
ARTIST / Elliott Smith
TITLE / Either / Or
LABEL / kill rock stars
DATE / 1997
TITLE / Either / Or
LABEL / kill rock stars
DATE / 1997
2080。聴いても聴いても、その底が見えない名盤というものがある。Elliott Smithの3rdにあたる本作も、その深遠がある。見えない。Heatmeiserが解散し、心から自分が求める音楽へと向き合い始めたSSWは、多少のバンドスタイルを採用しつつ、全ての演奏を歌そのものへの奉仕者として機能させる。全部弾き。天に与えられた才能があれば、本作の原初は1人で達成できるという事実。そして、この島国にまで届けられるという事実。事実は演奏と歌と、旋律と、言葉として、積み上げられていく。これが彼がしたかったことなのかと。全ての曲にくすんだ輝きがある。欲を言えば、M1を変更すれば、本作の輝きは2重にも3重にもなるだろう。スロースターターなかわいい1枚、と言い換えてもよい。もし本作が、M3のような印象的なイントロを携えていたならば。想像するだけで、ぞっとする。タイトルは、キルケゴールの同名書籍によるという。あれか、これか。退屈により絶望に行き着くという、美しい生活か。それに反する永遠性をもった倫理的な生活か。Eliott Smithが選んだ生活はどちらなのだろうか。キチンと選択できたのだろうか。きちんと選択できなかったから、彼は死んだのだろうか。分からない。でも、多分、彼は、絶望した。本作がリリースされた同じ年、彼は、ガス・ヴァン・サントによる『グッド・ウィル・ハンティング』のサントラに曲を提供する。本作に入ってる曲も含まれている。ご存知のようにその映画は、まだ世間に知られていなかった俳優マッドデイモンの脚本によりアカデミー賞脚本賞など2部門に輝く。そこに音楽が寄与したのはいうまでもない。相手があの『タイタニック』の"My Heart Will Go On"出なければ、もしかしたらEliott Smithはアカデミー作家になっていたかもしれない。そこからEliott SmithがメジャーなSSWへと展開する。しかるべき正当な評価である。誰もが、感銘する。そんな歌を抱えている。しかし、それが彼自身にどうのような影響を与えたのか。多くのスターたちが陥る、得体の知れない不安感や絶望感を彼も味わったのだろうか。哲学を学んだ彼だからこそ、浅薄で楽天的な未来を透視できなかったのではないか。そこに共感するし、共感できる人間でありたいと、そんな痛めな願望を常に抱えている僕たちは、やっぱり本作でも心動かされてしまうのだ。共感している、それがフリであったとしても、圧倒的に共感してしまいたいのである。僕は本作のM12の'Say Yes'を浴びるよう聴いた。シンプルなこの曲。いい曲はたくさんある。しかしsituations get fucked up and turned around sooner or later。そしてI could be another fool or an exception to the ruleyou tell me the morning afterである。Say,Yesである。