The Beach Boys : Pet Sounds
ARTIST / The Beach Boys
TITLE / Pet Sounds
LABEL / capitol records
DATE / 1966
TITLE / Pet Sounds
LABEL / capitol records
DATE / 1966
[19-71]。過去盤レビュー。ただの歴史的名盤。正直に言えば、本作を聴いて、どこをどのように聴取すれば本作の現代的輝きを取り出すことができるのかわからなかった。今も、分からないかもしれない。たとえ、山下達郎が一人で"Pet Sounds"を再現しようとしたといっても(記憶違いだったらごめんなさい)。The Beatlesの"Rubber Soul"に呼応して、Brian Wilsonが実質的にひとりで到達したという本作は、その後The Beatlesの"Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band"への橋渡しとなるとかなんとか、ポップス史的には、抜き出すことのできないジェンガ要素だとしても。それがどうした、と笑い飛ばすことのできないような位置を与えられているとしても。どの曲も3分前後でまとめられ、全13曲。トータルで40分を切るのがもっとも美しいサイズである。その程度にまとめられなければ、もはや1枚としてはベスト盤を除けば冗長である。もちろんポップスの話。鳴っている。牧歌的に、といいたい初動が、いつのまにか、天空的にあるというドラッギーなマジックは効いている。というか、それが全てなのかもしれない。チームメイトをただの声楽的楽器として用いようが、この頃のとんがりを偽装したBrian Wilsonは廃人への道を突き進みながら、到達しようとした、下界から飛び立とうとした世界があった。美しい1枚である。ただの、ただただの、美しい1枚である。中学生にはこの深み、この苦味はわからんだろう。大人だってわかりはしない。憧れるんだ。強く。ポップスを強く愛するんだ。解脱するんだ。おっぴろげるんだ。空を見上げるんだ。どうだ。1ミリぐらいなら地面から浮いてきただろう。それを1センチ、1メートル、1キロと訓練するんだ。目指すのは、天空だ。犬の鳴き声も、波の音も聞こえない遠くへと浮いていくのだ。デトロイトの俊英たちが、小さなビートマシンで宇宙を目指したように。なんということだろう。僕は30歳目前にして、本当の意味をつかんだと思う。死のう。もう死のう。そういう気持ちを抱えて、僕はもう死のう。僕がいない世界だって、神のみぞ知る世界なんだ。