Coil : Cassette Music
ARTIST / Coil
TITLE / Cassette Music
LABEL / soundwich
DATE / 2012
TITLE / Cassette Music
LABEL / soundwich
DATE / 2012
2258。以前紹介した盤"Auto Reverse"。何か新しい日々があるかも知れないという気持ちがある。2004年秋から2005年冬にライブ会場でカセット音源としてリリースされた"LUNCH BOX""X'MAS TAPE""CANDY SAYS""夏 DEMO""WINTER DEMO"の楽曲やネット配信された音源を詰め込んだ2枚組。2012年はCoilにとって総括的な1年だったようで、本作に続き、ベストや佳作集をリリースしていた。そして2013年に15周年に新譜を出した後、今年2014年に佐藤洋介が病気療養のために脱退し、実質的にぼくたちの2人組だったCoilは幕を閉じた。もちろん、またいつか復活するに違いない。個人的に、デビューから追いかけて、あきらめて、それでもなんだかんだ気にし続けた数少ない日本のユニットだった。歌詞も良い。曲も良い。名曲を書こうという気概に満ちた作家だった。今後も岡本OK定義はそのスタンスのままで進んでいくし、進んでいると思う。2012年の"0・10"で、ちょっとしたムーブメントだった(すでに終焉気味だったともいえるが)電子気味のインストへと浮気し、自分なりの音楽家になろうとして以来、同じくそんな時代の流れにまみれていた僕は何か違うし、それじゃないということで少しずつCoilから離れ、その距離感はつまらぬまま、現在を迎える。キチンと正当な歌モノへと戻ってはきてくれたけど、デジタル処理を覚えたテクニカルな音楽は、もはや僕たちの童心を刺激してはくれなかった。何か新しい日々があるかもしれないという気持ちは誰にでもわきあがるもので、進化への欲望によってCoilは突き進み、そして終わった。本作に詰め込まれているのは、獲得した音楽と言葉に向き合って到達した成果であり、もはや趣味的には響くことは少なくなったものの、感動すら覚える。2人のそれぞれのボーカルが、とても良いし、それぞれの曲がとても良いし、ジェイポップの範疇における名曲を鳴らそうとしている。昔のような気分にさせてくれる曲もある。佐藤洋介ボーカルによる2枚目M6の'スノーバラード'がそうだ。それに、1枚目M2の'ラヴィン・フルーツフル~恋する果実~'はベスト盤にも収録された完成された岡本ブシに満ちている。腐った日々に、発酵し続けるなかにあって、何か、希望というには大仰なひとつが、このなかで鳴っている。ありがとう。そして、2枚目M1の'ミュージック'、あまりにも暢気なイントロとふざけたAメロに辟易してからの、サビが、どこまでもサビ過ぎて、泣ける。