Aphex Twin : ...I Care Because You Do
ARTIST / Aphex Twin
TITLE / ...I Care Because You Do
LABEL / warp
DATE / 1995
TITLE / ...I Care Because You Do
LABEL / warp
DATE / 1995
2206。以前紹介した盤"Richard D. James Album"。3rd。最高のタイトルを引っさげた3rd。その哲学は、どこまでも受身であるが、しかし、その循環が始まるやいなや、世界は愕然と輝きを増す。その核心は、音楽とともに、現代のモーツアルトといわれたアンチダンスミュージック。踊るな、そしてどこまでも踊れ。その世界で踊れという精神性。ひび割れ始めた脳髄と、そこから撒き散らされる髄液を無視して、踊り狂う。ダンス。ダンス。ダンス。ダンスとは、もっとも美しい動詞である。Richardの呪術的な自画像が見つめるなか、プリミティブな次元へと還元された鼓膜は、不可解なビートにときめく。空気の振動は三半規管をねぶりながら、身体へと注ぎ込まれる。ダンスは身体から解き放たれ、精神のなかで、渦巻き始める。形容詞としてのダンス。われわれはダンスな状態へと導かれている。なんということでしょう。なんということでしょう。ぶりぶりのアシッドハウスや、心穏やかなアンビエント作品を何事も矛盾しないかのように作り続けていたRichardさんですが、本作では、ストリングやらを導入し、その後しばらく続く知名度へと接合するアプローチを見せる。まだまだ本作では混沌としているが、その暖かさは、ポップネスを胎動していた、のかもしれない(聴きやすさ、和み、その他大勢を含ませるならもちろんアンビエント諸作であろうが)。言い換えるならば、それはわれわれの耳が飼いならされた手段ないし制度としてのポップネスである。それに反して、われわれの筋肉は硬直を始める。さようなら身体。そのいびつな自画像が載せられているように、彼は、自分の精神性を曲へと分散させる。Aphex Twinをはじめ、Richard David Jamaes、Caustic Windowといった名義が、アナグラムとして不可解な曲名へと溶かされている。すこぶる、にやりとする。本作から、さらにその強度をどこまでもポップに、それでいて精神的ダンスへと昇華させるのは時間の問題なのであった。僕の心象を形作り、世界への態度を形作り、音楽を形作り、とにかく僕のべたべたな、それでも圧倒的な、アイドルとして君臨するRichardさま、ハッピーバレンタイン。I Care Because You Do