Coil : Love
ARTIST / Coil
TITLE / Love
LABEL / テイチク
DATE / 2003
TITLE / Love
LABEL / テイチク
DATE / 2003
[68-71]。以前紹介した盤"ギャルソン"。僕たちの青春Coilによる5th。前作"0・10"からプロツールスを導入し、それまでの宅録スタイルをおさらば。ある種時代の波に敏感に反応することで、なんだかよくわからないハイファイサウンドに堕してしまった。そんな僕たちの青春。正直音からも曲からも、何がよいのか分からないアプローチ。電子的な誘惑が時代によって要請され、それにある種ミーハーに飛びついた末路とでもいうか。音は暗く、意味がないほど内省的になっている。渾身のタイトルがつけられているにも関わらず、ここには輝かしきコミック・バンドとしてのCoilの姿はない。ただただ、お洒落であろうとし、ただただ最先端であろうとし、ただただ僕からは遠くなってしまった。もちろん僕はエレクトロニック・ミュージックを愛している。多分、心から。しかしCoilにはそれを一切期待していなかったのに。悲しいね。よい曲もある。シングルとしてリリースされたM3'Loveless'なんて、名曲の資格があったはずだ。清廉で、ポップで、作家一流の哀愁が漂う。優しい歌である。しかしそのアティチュードは、かつての飾らない彼らが、誇るべくして所有していたそれではない。悲しい音楽である。'Loveless'以降、彼らはシングルという形式をとらなくなった。もはや売り上げが望めないシングルチャートでの勝負をやめたともいえるかもしれないが、それだけではないはずだ。アルバム単位で、ゆっくりと、楽しく、制作を続けているとは思う。拝啓。僕たちのCoilさま。もとの4畳半神話に戻ってくれとはいわない。日本でもっとも有名な短編漫画「ねじ式」から借りてきたはずに違いないM1でさえ、なんとも薄っぺらい歌詞がつけられている悲しさ。彼らは詩人だった。僕たちが同時代的に共感する詩を書くことのできた数少ない詩人だったんだ。シューゲーザーからポストロまで、なんだか音響的な世界観を詰め込んだ本作。なんだかよくわからないままに、歓迎される可能性だって秘めている本作。でも、自我を形成してもらった僕としては、これを受け入れることはできないんだ。唯一、そのこころを保存しているのは変拍子を駆使したM8の「ダンス天国」、そして岡本さんが得意とする日常系惜別の歌の亜種としてのM9「Happy End」くらいか。これらは香ばしいパンである。聴けばよいと思うけど、僕は、やっぱり思い出を抱えすぎて、腰が曲がり、再生ボタンが押せない。10年前の音楽としては素晴らしいできだとしても。そして。愛を加えることに、圧倒的に魅了されている現在においても。