Christian Marclay : Records
ARTIST / Christian Marclay
TITLE / Records
LABEL / atavistic
DATE / 1997
TITLE / Records
LABEL / atavistic
DATE / 1997
1858。飾られる音楽にまい進するターンテーブリスト。1981年から1989年のレアな音源をまとめたatavisticらしい1枚となっている。僕の敬愛するひとつ上の大学の先輩が、2011年の横浜トリエンナーレのベスト作品としてChristian Marclayの名前を挙げていたことを思い出す。その評価こそ、もっとも価値のある賞賛であると僕は思う。信頼する評価者とは、敬愛する評価者と同意である。愛と言い換えてもよい。時間を集めるというパラノイアでいて、秀逸な試みが、今の彼を表しているとすれば、過去の彼の行為は、もう少し粗暴である。つるんでいる作家がニューヨークの荒くれモノであること、あるいは、アバンギャルドな堅物たちであることを考えれば、当然である。飾られる音楽と、ただのアンダーグラウンドな音楽は、地平が一致している。それを消費するのは、Zappaが好きな素敵な先輩と、くだらない人生を醤油とサラダオイルでずぶずぶにしている俺という地平の一致。それのかけがえのないラインが、瓦解しかけている形を枠にはめている数少ないクッキー型である。結局2眼レフを見せてもらうことは適わなかったけれど、横浜美術館でセザンヌか何かを干渉した後に、大量生産されたカフェで数時間話したのを覚えている。レコードすることの大切さは、過去について考えるときに起立する。まったく関係のないような事項が、人々をつなぐ。ささやかな言葉が重要な刃として、脳髄を傷つける。それを抱えながら、ときにあっさりと取りこぼしながら、音楽のように人生は過ぎる。