伊藤賢治 : SaGa Frontier Original Soundtrack
ARTIST / 伊藤賢治
TITLE / SaGa Frontier Original Soundtrack
LABEL / digicube / square enix
DATE / 1997 / 2006
TITLE / SaGa Frontier Original Soundtrack
LABEL / digicube / square enix
DATE / 1997 / 2006
1640。ロマンシングからフロンティアへ。ハードがSFCからPSに変わったこともあって、シリーズ名も変わった本作。ゲームとしては、美しいグラデーションに加え、同一の世界に存在する7人の主人公から1人を選ぶことで異なるシナリオを楽しむことができるようになった。個人的にプレイしたのはT260G編だけなので、それほど思い入れはないゲームですが、サガシリーズのなかでも人気の高いタイトルとなっています。その理由は、妙なキャッチーさにあるように思います。なんとなくサガ独特の空気感が現代風に洗練されてしまった印象もあります。ゲームの感想はともかくとして、音楽はどうでしょうか。イトケンがライナーノーツで言っているようサガフロ無印の音楽テーマは「いかに自分の音楽の多面性を表現できるか」だったようで、それゆえにイトケンの目標としては「この曲はイトケンっぽくない」「本当に全曲1人で作ったの?」と思ってもらえるようにすることだったようで。確かにバラエティにとんだ主人公に合わせてテーマ曲を設定し、それぞれのラスボス戦闘にも個別の楽曲を用意するということをやってのけている。個人的にはイトケンの目論見は成功している思う。ただそれゆえに、本作はひとつの世界観をつむぐにはあまりに散漫で分裂症気味になっているのは間違いない。引き出しの多さを見せたいならイトケン1人でやる意味があったのかもなぞである。イトケンに何を期待するかといえば、イトケンっぽさ以外でしかないから。それは決して画一的なことを期待しているのではなくて、イトケンのブシが響いたバラエティが望まれているのである。本作では時に素っ頓狂なまでに作家性が聞こえない曲があったりする。世界観の「ポサ」に擦り寄り過ぎている印象さえ受ける(ゲーム音楽という性格上、ナラティブや世界観に擦り寄ることは絶対的条件だが)。イトケンの音楽はどこに行ってしまったのか。もちろんさまざまな条件に引っ張られない戦闘曲などは秀逸な構成で、イトケンのそこの深さを見せ付けられる。見事な旋律と展開。しかし、盤全体として、なによりもサガフロ無印というひとつの世界を彩る音楽として、本作が優れているかどうかといえば、答えはノーだと思う。サガフロ2で見せた世浜渦さんがやってのけたのは本作に対する明確なアンチだった。いくつかの旋律を何パターンにもアレンジして聴かせたサガフロ2の音楽は偏執病的でありながら、強烈なひとつの世界観を演出していた。この感想は決して思い入れの問題ではない。いつかゲーム音楽史があまれるときに、編纂者によって間違いなく同様のコメントが添えられるだろう。