Cybotron : Clear
ARTIST / Cybotron
TITLE / Clear
LABEL / fantasy
DATE / 1990
TITLE / Clear
LABEL / fantasy
DATE / 1990
1638。Cybotronはテクノの歴史を語るときに必ずといってもいいほど参照されるユニットだと思う。Juan AtkinsとRichard Davisによって1980年に結成され、その後John Houselyが加わってバンドは始まった。ファンクを機軸にしながら、Kraftwerkの方向性を模していたようで、飛び交うシンセの要素に見られるテクノの萌芽とともに、バンドとしての形態にも意識があったみたいです。ギターソロやボーカルなどにそれが現れているように思う。それが元でAtkinsとDavisは音楽性の違いを理由に1985年に決別し、Attkinsはバンドを離れることになりました。その後Atkinsがテクノのオリジネーターの一人としてデトロイトをベースに宇宙へ開かれていくのはまた別の話。本作は、1983年にCybotronがリリースしいた1st"Enter"をもとに、トラックリストを若干変更して、解散後しばらくしてからリリースされたものです。"Enter"も"Clear"もトラックに入っているのですが、前者がギターソロなどをフューチャーしたバンド的傾向の強いものとするならば、後者はMissy Elliottが借用したことで有名な、浮遊するシンセサウンドが印象的なものとなっており、さながらRichard DavisとJuan Atkinsの方向性の違いを暗示しているかのようです。たたきつけるビートにシンセが絡まってややインダストリアルな香りがする本作は、僕個人の趣味でいえば、それほどどきどきするものではありませんが、それでも聴かれるべき対象として語り継がれてきた価値はあるのでしょう。そしてそれは、テクノを愛する人たちが聖地巡礼のようにして、本作にたどりつくのだと思います。それゆえに"Eenter"は"Clear"になったわけです。かつては中古屋でそこそこの値段がつけられていた本作も、どういうわけか再プレスされたようで、今では新品が廉価で手に入ります。未来志向、機械信仰とでもいうべきものが、速さを求める未来派的欲望として現れているジャケも素敵な歴史的名盤です。