Semuin : Province
ARTIST / Semuin
TITLE / Province
LABEL / audio dregs
DATE / 2005
TITLE / Province
LABEL / audio dregs
DATE / 2005
1286。電子と有機音の融合タイプ。Jochen BriesenさんによるSemuin名義です。マスタリングはGreg Davis。個人的にも久しぶりのaudio dregsでしたが、この手の音を手がけさせると一流のレーベルだということを再認識。うまいこと私の部屋を演出してくれます。チェロ、フルート、トランペット、パーカッション、ギターという楽器隊が見事に人肌感を生み出しながら、ノイズとしての電子音が混ぜ込まれている。このタイプは電子対有機の割合がその作家の個性として提示されるわけですが、Semuinは有機が高いといえるでしょう。ここで簡単な試論を提示しておこう。有機というものが安心感をもたらすのは、その音を鳴らしているものが何であるか分かるからである。反対に、電子というものが不安をもたらすのは、その音を慣らしているものがなにであか分からないからである。もちろん後者の場合でも、各種のシンセに通じることによって、その不安は解消されるし、前者の場合でも、奏法を卓抜かすることによる楽器の音の可能性を追求することで、いくらでもリスナの不安を掻き立てることができる。これは音レベルでの問題である。旋律というものを加味したとき、西洋音楽な単調の論理が支配する現在のポピュラー音楽においては、旋律そのものの成立(単調であっても)は安定を生み、安心を与える。旋律からの離脱はその逆である。まあこれは余談であるが。さて、本作のように電子と有機を掛け合わせるという手法がそれまでロックと呼ばれるものを聴いてきた人間にも受け入れられるというのは、音レベルで安心感の提示であるといえるかもしれない。電子のきらびやかさは確実にそれまでのアコースティックな音の出し方に大きな広がりを与えたが、それはブラックボックスの創出でもあった。陳腐なSF的発想、あるいはあまりにも自明な文化論であるかもしれないが、午前9時の思考には相応しい。SFといえば、先日、SF界重鎮の生き残りが1人次の階梯へと進んでいった。アジモフやハインラインよりは長く生きた。しかし伝説は終わったのである。