Rapeman : Two Nuns And A Pack Mule
ARTIST / Rapeman
TITLE / Two Nuns And A Pack Mule
LABEL / touch & go/blast first(mute records)
DATE / 1988
TITLE / Two Nuns And A Pack Mule
LABEL / touch & go/blast first(mute records)
DATE / 1988
さて、ようやく来ました。いろいろな盤を吹っ飛ばしてきました。稀代の最低バンドでその名を歴史かつ犯罪的に、極悪な乱暴さで挿入したRapeman。その唯一のフル・アルバム、最低な男たちの残滓を練り上げて作られた1枚がこの盤です。ドラムにRey Washam(Scratch Acid)、ベースにDavid Sims(Scratch Acid、The Jesus Lizard)、そしてギターとボーカルにはわれらがSteve Albini。このよのようなハード・コアな人々が80年代後半という最も90年代を準備したどろどろとした時期につくりあげたこのアルバムの重要性は大きい。Big Black解散後に結成され、それまでドラム・マシーンを多用していたAlbiniが生ドラムを主軸に採用し、そしてすでにこの盤において聴かれるドラムの音はRey Washamであってアイディアはどこにあるのかはわからないが、その音がこれ以後のAlbiniのプロダクション全体に関わっているのは明白である。ギターやベースの原音主義性はBig Blackのざらつきと鋼鉄性から引き継がれ、その後の非難ゴーゴーを知らずに叫び続けるAlbini先生の熱っぽさはすごい。このような最低のバンド名をつけたからにはそそれ相応の批判を受けるわけであり、Rapemanは解散することになる。しかしこのバンド名が日本のエロ劇画作家みやわきしんたろうの同名作品からとられているということを考えるとこの意気揚々とした3人は日本人のスケープ・ゴートになったわけだ。ちなみにBig Blackの"Songs About Fucking"のジャケがその漫画からとられているのはこのRapemanというバンドのいきさつとあわせてあまりにも有名である。そのことを考えるとこの盤を聴くということがその申し訳なさを葬り去る唯一の方法といえるかもしれない。というのもこの盤のたった3人が作り出す、一聴すると粗雑な音が、その後旋律性の偏重から離れていき、非常に真摯に音自体へと向かっていく、そのような萌芽を聴いて取ることができるからである。もしも誤解を生むようならば、あらゆる潜在的に偉大な女性たちに謝る準備があるけれども、この盤がかっこいいということはとりあえずこのレビューに書き込まざるを得ないということを許してほしい。あくまでもこれは現実の何者も指し示さない虚構であるという了解を美学的に忘れないことによってこの盤を聴こう。その後Rapemanの音像は明確な影響圏のもとにThe Jesus Lizardへと引き継がれていく。この流れは試験に出ます。あとSonic Youthとの間に微妙な確執が生まれたらしい'Kim Gordon's Panties'にも注目。関係史として重要です。