Jorma Whittaker : S/T
ARTIST / Jorma Whittaker
TITLE / S/T
LABEL / secretly canadian
DATE / 2003
TITLE / S/T
LABEL / secretly canadian
DATE / 2003
1195。シンガーソングライターは肖像を要求する。その声は常に実在の人物をリファーする性質を帯びている。それは流通システムが整備されて以来音楽に付着してきた画像という視覚的側面にも現れている。シンガーソングライターは常に自身を肖像し、自身の実在をアピールする。彼らは本名によって自身の実在を主張する。ときに彼らはすべての演奏を自分でこなすことによってあらゆる音の自身の痕跡をこすり付ける。シンガーソングライターとは、常に自己によって自分を形容するのだ。この盤はJorma Whittakerによる1stである。アルバムタイトルはそぎ落とされ、自身の名前が二重化する。セルフタイトルの作品はその表現者の一部として表象され、シンガーソングライターにとっては自己の一部である。それゆえ、本来的にいえば、セルフタイトルではない名前のあたらられた作品集は矛盾しているようだが、シンガーソングライター的ではない。とまあ適当なことを書いてきたが、この盤はsecretly canadianのシンガーソングライター部門の盤である。Jorma Whittakerなる人物に関して、それほど情報があるわけではない。以前からやっているバンドがMarmosetという名前であるとかその程度である。そして上述したようなシンガーソングライター性というのがこの盤に宿っているかといえば疑問のほうが多いくらいである。いくつか印象的なん曲もある。90年代欧米インディーの流れを汲むもの、70年代の偉大なる先達たちからアイディアの破片を広い集めたようおな作風である。Jorma Whittakerはそれを消化吸収してして行為しているというよりも、残りかすのうんこを提出しているといった趣である。うんこという語感に否定的な意味をのせているわけではなく、生理学的モデルによって説明するとうんこ作品である、ということである。そのうんこは他ならぬJorma Whttakerのものであり、ある種シンガーソングライター的うんこであるということができるだろうか。いや、それはできないだろう。そこには微細なるシンガーソングライター的微生物がはびこっているかもしれないが、その微生物の塊で構成されていない以上はだめなのである。難しいところではあるが。とはいってもセンスのよさはその芳醇な香りが証明している。機会があるなら3rdあたりを期待。