Him : Interpretive Belief System
ARTIST / Him
TITLE / Interpretive Belief System
LABEL / wordsound
DATE / 1997
TITLE / Interpretive Belief System
LABEL / wordsound
DATE / 1997
1187。関連盤はこれまで何枚かレビューしてきたのだが、以外にもHim自体を取り上げるのははじめただったようで。ドラマーDoug Sharinを中心にニューヨーク界隈のミュージシャンシップを集めて作り上げられたHimのサウンドは2000年代にある程度の支持層を獲得していた。僕が完全に後追いでHimを知ったのはおそらく2003年くらいだった気がする。その頃すでにHimは洗練された方法論を手に入れ、「ポストロック」を語る際にしばしば言及された、と記憶する。さて、そのときの言説でよく引き合いに出されたのがダブである。たしかにそのような雰囲気をまとわりつかせていたが、それがHimの中心的な方法論を占めているとは到底思われなかった。少なくとも僕はHimにダブを聴いているわけではなかった。卓越した演奏技術に裏打ちされたあくまで有機的な秩序を聴いていたのである。しかしこの1stを聴くとき、なるほどHimがダブを主体としているというのが明確に感じられる。漂う浮遊感と、リズムはレゲエの確信に一致しているかのように錯覚させる。フィッシュマンズのたゆたいとの符合である。軽快というよりも粘着質なドラム、そしてちりばめられるアナログな電子的装飾。別にこれらがダブの構成要件であると主張するわけではなく、それらが総合することによって、これがダブと呼ばれるものだろうという確信が強いられる。多分現段階ではそれでいいのだろうと思う。正直いえば僕が求めるHim像とはかなりぶれているというのは事実である。非常にプリミティブな全体が洗練という言葉を忘れさせる(洗練、これは僕の知っているHimに非常にふさわしいタームであるような気がしていた)。たしかに、ここにはHimを感じさせる諸要素しかない。しかし全体こそが常にモダニズムの極地でぐらついている僕の関心をひくものである。この盤を知らずにHimにコミットできないという事実は、今更ながら脳を撃つ。全6曲。長尺の曲が集合し、僕の関心を引き続ける。