Suicide : S/T
ARTIST / Suicide
TITLE / S/T
LABEL / red star records/demon records
DATE / 1977/1986
TITLE / S/T
LABEL / red star records/demon records
DATE / 1977/1986
1063。このジャケに魅了されて結構時間がたってしまいました。名前は聞くけど音像がいまいちつかめないのがニューヨークの新しい波です。しばらくレビューする気を逸していました。そう、ニューヨークの地下を基盤にしたデュオといえば、Alan VegaとMartin RevによるSuicideですね。書きなぐられた自分達の名前は、1stを華々しく飾っている。新しい波とはまさしく新しい技術である、というテーゼを敷くと、Suicideの方法論で重要な位置を占めるMartin Revのシンセサイザーが新しい技術にあたるだろう。破壊的な方向に進む事はなく、軽快な明るさを秘めながらも退廃的な空気を生み出している。その意味ではThe Velvet Underground以来の正当なニューヨーク・パンクの歴史にきちんと組み込まれているといえるだろう。奇跡的なことに、おそらくギターやベースといったそれまでのロック・フォーマットが採用されていない為に創り出されるのは、ポップ性という、ある種の至上主義に抗うロック・メンとしてのオーセンシティの欠如であろう。機械を操るのは最小限の身振りであり、構想と構成という伝統的な修辞学モデルのなかで成立する楽曲群は、ボーカルの身体性を除けば、まさしく「ポップ・ミュージック」という仮構された名称で呼ばれても相違ないのかもしれない。受容のレベルではなく、作者レベルでの観点から言えば、Suicideはポップスなのである。以上のようなどうでもよい考え方を置くとして、この盤の現在性を捉える必要がある。歴史化されるには余りある盤なのだが、今でも聴に耐えるのか。答えは是、だと思う。今思えば華奢なプロダクションのなかに見え隠れする刹那の感性は、緊張感を持ってこちらの正座を要求する。とりあえずM1のイントロで、予感せよ。