Speedy J : G Spot
ARTIST / Speedy J
TITLE / G Spot
LABEL / warp records
DATE / 1995
TITLE / G Spot
LABEL / warp records
DATE / 1995
1011。Jochem George PaapによるSpeedy Jは僕にとって意外と重要である。端的に好きな作家のほとりとしてあげることができるかもしれない。A.Iシリーズにその名を刻んだSpeedy Jがそこからライブ盤をはさんでリリースした2ndがこの盤である。そしておそらくwarpがライセンスを持っていたのもこの盤が最後だろう。この後Speedy Jはnovamuteに活動の拠点を移すことになる。細部にまで行き届いたビートのラッピングは決め細やかで知的であるし、身体性に働きかける効果を引き出すことも忘れ去られてはいない。高音領域でのウタイがやや前作に劣るように感じられるが、それはハードルが高すぎるためともいえる。以前レビューした'Loudboxer'では完全に過去の業績から脱却し、反復するストイックなビートを追求している宣教師のようなミックスに挑んでいたけれども、さすがにまだ2ndということもあり、試行錯誤はあるものの、1stの強力な影に引きずられているという印象がぬぐえないという事実もある。追憶もそこそこにつぎに進まなければならないというプレッシャーと、投げかけられる1stライクな盤への期待、そのなかで何とか搾り出した盤だったのかもしれない。長尺の曲が多いなかで、2分半で仕上げられたM8でのウタイに耳がとらわれる僕であるが、そこから継ぎ目なく展開される表題曲M9によってSpeedy Jという存在がどれほど気配りの利く作家であるかということをまざまざと見せ付けられたというのも事実である。音のすべてがぶつからず、それぞれの存在を主張するという見事な構成を見せている。叙情性が相対的に欠如することにより、次の一手が見え隠れする橋渡しの盤としては注目すべき部分が多い名作です。