Bachir Attar / Elliott Sharp : In New York
ARTIST / Bachir Attar / Elliott Sharp
TITLE / In New York
LABEL / enemy records
DATE / 1990
TITLE / In New York
LABEL / enemy records
DATE / 1990
ニューヨークの地下で名前をとどろかすElliott Sharp、彼が見せるポストコロニアル的まなざしはその実践を今日的なポピュラー音楽においては泥臭くも興味深いものである。この盤で彼がコラボするのはモロッコの伝統音楽Jajoukaを前衛的な方面で今日に伝える演奏家集団Master Musicians of JajoukaのリーダーであるBachir Attarである。MMOJはジェニロペ主演の映画「セル」で音楽を担当したらしいので知らないところで彼らの音楽を聴いた人も多いかもしれない。この盤を聴けばすぐに漂ってくる非西洋的フレーズと響きが強烈にある種のカテゴリへとこの盤を押し込めようとする脳内の操作を後押しする。ああなんか新鮮だな、とか、エキゾチックだね、とか、その他色々の感想が思い浮かぶ。正直僕の中でもそれ以上の言葉が見出せない。表面のメロディを作り出すBachir Attarはよいとして、やはりElliott Sharpの仕事が非常に控えめであるところが原因ではないか。異文化が交差するとき、それはいわゆる多数派の文化が譲歩する事によって少数派を特に強く押し出すという傾向があるように思うが、それは果たして文化交流としてあるべき姿かどうか疑問である。両者の相互作用は常に対等であることにより、面白い作用が導き出されるわけであって、譲り合いをするならば、それぞれが別々の活動をすればよいのである。まあこの盤で個人的に気に入らない事は別の点にもあって、Elliott Sharpが手がけるリズムパート、特に打ち込みのドラムがもう我慢ならないほどぺらぺらで、それが全体的に曲を宙に力なく浮かしているのである。なんにしろこの盤は新規さの見世物から脱却した方向へと進むべきであったと思う。付け加え程度で申し訳ないが、Bachir Attarのなんと言う名前かよくわからない楽器のプレイは素晴らしいということは本当です。