Nellie Melba : Farewell 1926
ARTIST / Nellie Melba
TITLE / Farewell 1926
LABEL / eklipse records
DATE / 1992
TITLE / Farewell 1926
LABEL / eklipse records
DATE / 1992
web上でジャケを発見できませんでしたのであしからず、タイトルからも推察できるように歴史的録音のデジタル・リマスター盤、オーストラリア出身でオーストラリア紙幣にもその肖像画が採用されたという20世紀初頭における世界的ソプラノ歌手Nellie Melba、彼女が1926年6月8日火曜日にCovent Gardenで行った最後のオペラ公演を録音した音源がこの盤です、その名声が世界にも広がったということもあり、もしかしたらオーストラリアで知らない人はいないということなのかもしれません、この盤の後も何度も引退を繰り返し、結局1928年のシドニーで正真正銘最後のコンサートを行ったようです、録音されている音源が他にどれほどあるのかはわかりませんが、時代が時代なだけにそれほど多くはないでしょう、その意味でも貴重な1枚となっている、当時の録音機材の状態、またそれを記録したレコードか何かの状態によってノイズと空気の音がかなり混入していますけれども、おおむねクリアなサウンドが聞けます、その歌姫としての自意識の過剰さもあいまって、彼女を歴史化してナラティブへと転化していくことも可能かもしれないが、当時の音の震えにある程度の客観性をもって迫るこの録音からはじめることが、彼女とあまりにも隔たった時代に生きるわれわれの最良の方法であるように思う、天使の歌声という常套句が彼女にも用いられたのかどうかはわからないが、ソプラノとして伸びのある高音はぶれることなくスピーカを震わす、上演曲目などを控えるのが筋かもしれないが、手元に資料が見当たらないために、とりあえずは複製メディアの偉大さと危うさいうものを最後に強調して終わろう、このような歴史的録音が現在でも簡単に入手できるということはすばらしいことであるけれども、ある種の文脈から切り離されたときに、われわれの作品を享受する態度というものも簡単に変容する、自意識過剰な女であったというMelba像はときに彼女の声をわれわれの内部で勝手に独特の概念と結び合わせて変容し、脳へと浸透させ、判断を下す、何も知らずにとりあえず再生ボタンの三角形を押すのがよいのか、それともこの偏見に満ちた文章を読んでから彼女の声を聴くのがよいのか、いずれにせよ、このことを念頭に置くということを忘れてはならない、ちなみに何の気なしの聴体験としては不快感はなく、気軽に聴ける普段聴きの一枚ってことで