Low : One More Reason To Forget
ARTIST / Low
TITLE / One More Reason To Forget
LABEL / bluesanct
DATE / 1998
TITLE / One More Reason To Forget
LABEL / bluesanct
DATE / 1998
97年にルイヴィルの教会で行われたライブを録音したもの、今更Lowかよ、というツッコミを軽やかに左から右へと受け流しながら、このほぼ10年前の音源が、今でも現在性を失わずに僕の心にとどまっているかどうかは不問にしようと思う、主にkrankyを中心として活動した90年代のlowはそのシーンを広く拡大するのに大きな役割を果たしていた、2001年の'Things We Lost In The Fire'ではAlbiniを迎え、kranky系の音が市場的な最高潮を迎えたと考えるのはあくまで僕の主観、ないしはLサイドとの共時的な兼ね合いかもしれないが、世間がLowに現在どのような拍手を送っているのかは不確かである、ドラムのMimi Parkerという女性を含む3人によって創り出されるBPMのスローな音楽は音響的な要請とともに、スロー・コアなどと呼ばれる呼称を与えられていた、この盤においても教会という空間があたかもその建築における概念に規定されることによって音の広がりに納得が生じることにだるだろう、ボーカルまで演奏に引きずられるかのように物憂げを帯びる音楽によって聴衆の身体は執拗に重力の働きを喚起され、現在このライブ音源がかかっているこの部屋でも僕の身体はどんどん下へと沈んでゆく、ねばねばした音は不連続性ではなく連続性によってねっとりと時間に纏わりつく、その不連続性によってセグメントを切り取るドラムでさえも残響によってミートの瞬間を拡張する、そんなLowというまさに名と音が一致したバンドが放ったこのライブ盤が、当時の拍手も伴って現在に召還されたとき、一種の医療的カタルシスによって聴いたあとに心身ともに虚脱感に襲われるだろう