井上陽水 : 断絶
ARTIST / 井上陽水
TITLE / 断絶
LABEL / Polydor
DATE / 1972 / 2001
TITLE / 断絶
LABEL / Polydor
DATE / 1972 / 2001
別に奇をてらったわけではありません。変化球でもありません。The Beatles以来の系譜にきちんと位置づけられるとともに、僕の音楽への興味をシフトさせていく90年代の偉大なるジェイポップへとつながっているわけですから。僕が買ったはじめてのアルバムは、奥田民生の『29』でした。いい盤でした。僕が珍しく集めたのはサニー・デイ・サービスでした。フォークという美しき運動性は彼らのなかに適切に受胎していました。いいバンドでした。それにしても井上陽水。今でも奇妙な風貌とキャラクター、そして生み出した名曲によってどのような形であれ認知されている。実は彼は天才である。もちろんこの言説に対して、今更なにいってんのよ、という人もおられるでしょう。しかしいつなんどきでもこのような確認は必要なのである。いつなんどきでも。いつなんどきでも。僕は、あの、にやついたサングラスに不信感を覚えていました。彼の顔には間違いなく狂気が刻み込まれている。恐怖。それはソクラテスがイオンに対して説いた、あの神の恩恵というやつで説明してもよい。彼の創り出したメロディ、そして歌詞、これら歌に不可欠な要素が素敵に練り上げられ、適切に繰り出される。圧倒的明るさと、圧倒的暗さは共存する事が可能である。素晴らしい形式、井上陽水という形式のなかにはそれが実現している。なんてこった。ありえない。今のひとたちがはじめてこれを聴くと、声が多少異なるため、井上陽水であると同定できないかもしれないが、しかし間違いなくこれは井上陽水のもっとも最初の塊が詰め込まれた1枚である。おそらく誰もが感動したであろうM12の'傘がない'まで一気に、そして永遠に駆け抜ける名盤である。一応、ポリドール時代の初期傑作盤をオリジナルLPから忠実に再現した限定版紙ジャケを買いました。残念ながら、これ以後連続して同シリーズをレビューすることにはなりませんが、手に入り次第また。