Black Dog Productions : Bytes
ARTIST / Black Dog Productions
TITLE / Bytes
LABEL / warp records
DATE / 1993
TITLE / Bytes
LABEL / warp records
DATE / 1993
A.I.シリーズの三番目、すなわちV.A'A.I'とPolygon Window'Surfing On Sine Waves'に続く作品です、残念ながら予想通りの傑作です、軽く口元がにやけます、A.Iシリーズというもののポピュラー音楽史上における位置づけがどういうものかわからなければ、このシリーズはPolygon Windowのみを触って通りすぎていくわけですが、その中でも比較的有名なのがこの盤なのかもしれません、通り過ぎるか聴くかというのは本当に極僅かの探究心の違いから生じるものでしょうから、できるならば後者を選んで欲しいところです、本当にそう思います、架空のオムニバスという形でPlaid(2曲)、Close Up Over(3曲) 、Xeper(1曲)、Atypic(1曲)、I.A.O.(1曲)、Discordian Popes(1曲)、Balil(2曲)という名義が並んでいるわけですが、もちろんそれぞれBlak Dog Productionsの当時のKen Downie、Ed Handley、Andy Turnerという3人が単独ないしPlaidの場合はEd Handley、Andy Turnerの二人ユニットによって曲を書いているようです、純粋に分業がなされていたかどうかはしりません、ちなみに現在はBlack DogはKen Downieがいないというのは周知の通りです、意識的にPlaid名義で盤がリリースされることもありました、しかしこの盤は3人です、そしてKen DownieによるI.A.O.こそV.A'A.I'に曲を提供していた名義に他ならない、M5のClose Up OverもM6のI.A.O.もDownieで名曲の流れである、M10も最高である、というかKen Downieの名義のメロは再考に涙腺を刺激する、M9のBalilの曲も悪くない、ちなみにこれはMerckというタイトルの曲なのだがなんとも興味深い名前である、ラストのM11もBalilだがこれも悪くないですね、Heartというタイトルもイカす、というか何でこんな名盤なんだろう、なんでこんな泣けてくるんだろう、僕は93年という時代にこんな音楽は聴いていなかったし完全にたった今聴いているわけなのですけれども、10数年の歴史がまざまざと脳裏に通り過ぎるという奇妙な気持ちに襲われる、完璧に端整な電子音によって構成されているにも関わらず、まるで精神から発露しているかのようなしずくが僕の全体を過剰に洗浄していく、完璧に泣かせにかかっているこの攻撃性、オーディオのスクウェアを押して反省したとき、幸福のあとの反動的絶望がその瞬間から湧き出すような、そんなある種の崇高体験に近いわけのわからなさがある、どこまでも旋律的でありながらこの構想力と理性の混乱へといざなうこの作品はただただあらゆる人々に捧げられてしかるべきだ、電子音楽全般における突出した1枚として、大衆すべてに開かれたものとして、とりあえず存在している傑作なのである、涙で前が見えない