Tortoise : Millions Now Living Will Never Die
ARTIST / Tortoise
TITLE / Millions Now Living Will Never Die
LABEL / thrill jockey
DATE / 1996
TITLE / Millions Now Living Will Never Die
LABEL / thrill jockey
DATE / 1996
2105。Lサイドによるレビューはこちら。以前紹介した盤"Beacons Of Ancestorship"。「ポストロック」とは何か。Simon Raynoldsがちょうど良い時期、すなわち1994年にたまたま批評的に用いたよく有る言葉が拡散したまでに過ぎない言葉なのか。それがシーンを形成していくとき、あるいは実態的にも拡散してしまうとき、僕たちはそれをつかみ取らされた。本作はその確信ともいえるものを抱えた正直久しぶりに聴いた。いつごろ買ったかははっきり覚えてないけど、その頃は正直、自分にこれが良いんだって言い聞かせてた部分があることを告白しよう。それが次第に脳みそにしみこんでくると、どんどん聴覚が歪んで行き、今みたいな性向を獲得してしまった。「なぜTortoiseを聴き始めたのですか」「覚えていません」。これは結構悲しい記憶の喪失である。演者はDan Bitney、David Pajo、 Douglas McCombs、John Herndon、John McEntire。Dabid Pajoがまだ在籍してたんだぁと思って眺める。M4はかつてメンバーだったBundy K. Brownの作曲。まだシカゴなギタリストJeff Parkerはまだいないね。さて、本作の関門はなんといっても20分に及ぶM1'Djed'である。それがかなり厄介で、それの壁の高さが故に本作はいわくとらえがたい輝きを与えられる。そこにはクールネスよりも、やっかいなエクスペリメンタルが響く。音響的に。M5もそうだ。「ポスト」というものが強烈に、強烈ににおいたつ。1stでは演奏により純化されていった「ロック」なるものからの逸脱が、概念化されてしまい、ロック性が霧散している。それでもM1なんかは中盤以降に、驚くほどクラウトな、というかNeu!的な着実さを帯び始めて、なるほどと古きよきロックの系譜だわいと、合点を強要してきたりもする。いまだになんだかよく分からない。でも、実は意外とキャッチーっていうのがミソだったりもするんだけど。どこまでもTortoiseのブシであふれながら、個人的にはやっぱりM4のような直球Tortoiseが好きで好きでたまらないんだけど、これが本筋かどうかは怪しいところでね。ポストロってのは、リズムの先鋭化、というかドラムやベースを含めて全ての楽器はそれ自体が響きを持つ等価な音色であるということのまったき自明の実践だととらえている。それらが全てどの中心性にも属しない。そういう意味では、脱中心化による脱モダンであり、そこには往々にして郵便が与えられているのが常である。われわれは、次の手紙を今か今かと真っ赤な顔をして、息を止めて待ってる。ゆっくりと海を泳ぎながら。