The Faith / Void : S/T / Subject to Change ep
ARTIST /The Faith / Void
TITLE / S/T / Subject to Change ep
LABEL / dischord
DATE / 1982
TITLE / S/T / Subject to Change ep
LABEL / dischord
DATE / 1982
[58-71]。The FaithとVoidという2つのバンドのスプリット盤とThe Faithによる"Subject toChange"ってのを1枚にぶち込みこんがり焼きました。The Faithは Ian MacKayeの弟であるAlecをフロントに添えた短命バンド。Voidのほうも、70年代後半に結成し、1982に解散しています。パンクが次のステージへ進む一方で地下へと進み始めた時代、ハードコアなんて言葉が現在まで適度に保存される礎の1部となった2つのバンドなのかもしれません。2分を超えるのはVoidによる1曲だけというもはや簡潔さと勢いに身を投じている若者たちの焦燥する魂をエネルギーに、だみ声によるシャウトと、まったくもって複雑でない構成によって、おそらく極狭のフロアを熱狂させたんだろうと想像される。従来のパンクと、その後のハードコアの違いってのは、その深刻だが(dischord的には清廉なDIY精神に基づくはずの)激しいエネルギーがポップネスを漂白していくことにあるのか。The Sex Pistolsのような快楽はここにはない。激しくも冷めている。VoidもThe Faithも、どちらがどちらかが分からないほど愚直さとして抽象化されているように感じ、区別することができない程度に合一である。それは僕自身が、勃興しているハードコアないしその後の展開についてさほど詳しくないからかもしれない。どこまでも速さを求める形式性を持っている(という定義が正しいのかは分からない)ハードコアの世界にあって、本作で展開されているのは、速度をときに抑圧するかのような身振りである。もちろん明示的ではない。落ち着きない子どものようにすぐに駆け出してしまうのだが、それでもぐっとこらえようとする精神性がある。演奏も意外と愚直ではなく、遊びがある。ほんのわずかだけど。この辺の動きってのが、現在でもクローズすることなく続いている奇跡的なインディー・レーベルdischordの方向性を魂として、原理として支えているような気もするね。本作はラスト28分を笑い声の反復で占めている。どういうつもりなのか分からない。とにかく、一応せまーいせまーい業界の歴史探訪ってことで。プロデはもちろんMinor Threat時代のian MacKaya。